財団法人 民間放送教育協会

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第115回 安住のバランス~田舎をめざしたOL~

2006年10月21日(土) RKB毎日放送制作

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東京でOLを4年半やっていた鈴木由美子さん(33)は、今春、会社を辞め、九州の平凡な田舎町、福岡県築上町へ引っ越した。NPO地球緑化センターが主催する『緑のふるさと協力隊』のボランティアに応募する形で田舎へやってきた鈴木さんだが、同協力隊の目的は地域の活性化で、活動内容は農林水産業と村おこしの手伝いだ。彼女はアメリカ留学経験があり、外資系のコンピュータ関連企業で通訳・翻訳などの事務をやっていた。よって、新天地での仕事は全くの素人。緑化センター事務局は、協力隊を始めた当初は、参加者の間に社会貢献という目的意識が強かったが、今は「自分探し」、「居場所さがし」の若者が多いと話す。鈴木さんは「田舎生活はスローライフ、ロハスというイメージ」で移住した。土日曜も関係なく農作業に明け暮れ、コミュニティーの濃密な人間関係に、予想外に「忙しい」という。また、アスパラガス、水稲、養鶏などの農家を手伝ううちに、自分と同世代は殆ど全員が街へ働きに出ていることを目の当たりにし、厳しい農村の現実を知る。家と車こそ町から貸与されるが、月収は5万円と激減した。それでも、彼女は自信を持てないこと、不安というものを頑張りの起爆剤にするという。今年は鈴木さんを含めて37人の協力隊員が全国31の町村に派遣されている。これまで13年間の隊員は357人、1年の任期途中で田舎を離れたのは、わずか9人。任期後は三分の一が、赴任先の田舎に定住した。農村の後継者問題は相変わらず深刻だが、都会の若者の間には、こうしたカネ・モノを超越した新しい価値観が生まれている。


キ ★ ラ ★ リひとこと
このテーマを取り上げたのは、率直に言って、私の理解を超えていたからである。 青壮年が職を求めて出て行っている田舎へ、都会で定職がありながら、それを辞め、逆に飛び込んでいく若者たち。リタイヤ族やUターンなら理解できるし、そもそも番組にしようとも思わなかっただろう。都市と地方の格差是正や、農業の復興といった大命題があることはよく分かる。都会の喧騒やストレスから逃れたい気持ちも共感できる。だが、殆どの人は今の生活で精一杯だったり、将来への不安があったりして、やりたくてもできないでいる。外務省の海外青年協力隊も、赴任中の積み立てこそあっても、任期後の受け皿は用意されておらず、OB・OGの悩みや困窮ぶりを取材したことがある。緑のふるさと協力隊も、任期中の生活は倹約すれば何とかなりそうだが、その後の保障はない。社会貢献とか、ボランティア精神ときれいごとは言っても、再就職の際、そうした経歴をポジティブに評価してくれる企業は少ない。かといって、就農をふくめて、自営や起業も簡単ではない。5か月に亘る取材だったが、結局、展望は見えて来ず、かといって、開き直りもなく、釈然としない。判ったことは、カネやモノを超越した価値観が机上ではなく、実行に移され、こうした流れが歴然とあるということであった。

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