





初めてこのお店に食べに行ったのは去年の春ごろ。住宅街に迷い込みながらやっと辿りついた私にラーメンを作ってくれながら、まだ聞いてもいないのに自分の波瀾万丈の半生を一方的に話しかけてくる政子ばあちゃんが愛おしく、頭の片隅で長い間気になる存在になっていました。取材をお願いしようとした矢先、今度は骨折し長期休業…番組化計画は一時ストップ。ですからこの作品はいわば政子ばあちゃんの「復帰第1作」でもあるのです。長期休業したことで常連客も廃業したと思い込んだようで、賑わいを撮影しようと思った時に限ってお客さんは来ず、何度かお客が私だけという日も…。20人分の材料で作ったとても贅沢な1杯のラーメンを味わい、食べ終わった直後に残ったスープをいさぎよく流しに捨てる姿が切なかったなあ…。取材を終え、そろそろ帰ろうかなあと思うとなぜか少しずつ「おやつ」を出して来る政子ばあちゃん。「もうちょっと(ここに居ても)いいんじゃない…」と何気に私たちを引き留める作戦を図ってくるあたり、頭もカラダもまだまだ元気と思われます。番組の完成に当たり「放送するとお客さんが一杯来るから覚悟してね…」とは伝えてはありますが、「1日限定20杯」「売れても売れなくても3時には閉店」は政子ばあちゃんにとって歯を磨くのと同じ位に日常のことなので、お店に行っても食べられない場合もあるかもしれません。専用の駐車場もありませんので、どうかご理解の上根気強く通ってみて下さい。幸いにも食べることができたらきっと「いいこと」があるはずですから… <ディレクター 山内 正俊>