



田舎に暮らす素朴なお年寄りたちの表情を独特の作風で豊かに表現する創作人形作家・高橋まゆみさん(53歳)。長野県飯山市で夫と義父母と暮らしながら、身近にいる人々をモチーフにした作品作りを続けています。農作業の合間に田んぼのあぜ道でひと休みする老夫婦など、ほのぼのとした人形たちは古き時代を想わせます。農村での慣れない暮らしにストレスを感じ、すがる思いで創作に没頭していた時期もありました。しかし周囲の自然や飾らない人々の魅力に気づいたとき、高橋さんは穏やかな気持ちを取り戻し今の作風に辿り着きました。「人形という物の中に心を表現したい」と語る高橋さんは人々を見つめ印象的な瞬間を人形に写し取りますが、その胸中には長年寝たきりの生活を送っている実母への強い思いがあります。同居の義父母にも老いが迫ってきている今、ぬくもりや優しさ、悲しみなど様々な感情を人形に込めて創作している高橋さんの作品作りに密着します。

「丁寧に作るのは苦手。家庭科の授業でも怒られっぱなしだった。」という高橋さん。
試行錯誤の末に自分で見出した作り方は、言ってみれば“企業秘密”のようなもの。そこを全工程、カメラを回させていただきました。みるみるうちに姿形を現してくる、お年寄りの豊かな表情やしぐさ。その手業の素晴らしさに何度ため息を漏らしたことか…。農村に暮らした結果、趣味が転じて「仕事」となった人形作り。誇りをもって取り組む高橋さんは、これからも身近な人々に目を向けて故郷の情景や心を形にしていこうとしています。
◇ディレクター:笠井直美◇