



ピュリッツアー賞カメラマン・沢田教一がカンボジアで亡くなってから40年の歳月が流れようとしています。夫亡き後、妻・サタさんは、故郷・弘前で自宅を使ったレストランを営んでいます。それは、夫と過ごした三沢でアメリカ軍人の家で働いた頃に覚えた洋風料理の知識に、ベトナムにいた頃覚えたフランス料理の知識を役立てたものです。番組では、一人の女性が青春時代に覚えたことを生かして、84歳になる今も生計をたてている、その「老婦人が料理に生きる日常」を描きます。訪れる人たちとの語らいの中に、サタさんの喜びがあります。平凡な市井の民の背後に、日本も深く関わった20世紀後半の大きな戦争があることを意識しつつ、一人の婦人の生活をおいしい料理を味わいながらこまやかにみつめます。

60年代後半から70年代にかけて続いたベトナム戦争において、報道写真によって戦争の真実を伝えたカメラマン、沢田教一。彼が戦場で落命し40年の歳月が流れた。残された妻・サタさんは故郷・弘前で自宅を使ってレストランを営んでいる。彼女が料理で生活の糧をえることになったのはどうしてか。それを取材することは、日本の戦後、米軍の進駐、ベトナム戦争、そしてカメラのことまで、政治と生活が密接につながっていることを知らされることであった。サタさんの作る洋風料理は手間がかかっていて、本当においしい。戦争の怖さが忘れられつつある現在だからこそ、私たちの食する料理のおいしさの背後にある人生と戦争の意味を考えてほしい。そのように祈念してこの番組を作った。
◇ディレクター:藤田晴央◇