福井県越前市は、南北朝時代に起源を持つ「越前打刃物」の産地です。手作業にこだわって作られる刃物は、丈夫で切れ味抜群。国の伝統的工芸品に指定されています。
この町の若手鍛冶職人として注目を集めているのが、黒﨑優さん(37)。2年前に自分の工房を持ちました。黒﨑さんは伝統の技に若い感性を取り入れ、デザイン性と機能性を合わせ持つ包丁を作っています。大きな特徴は「槌目(つちめ)」。
包丁に槌で入れた凹凸の模様は、究極の美しさです。
さらに、槌目があることで包丁と食物の間に空気の層
ができ、切り離れが抜群に良くなるのです。
黒﨑さんは14年前、越前打刃物の製造・販売をする「タケフナイフビレッジ」で修業を始めました。タケフナイフビレッジでは、複数の刃物会社が工房を共有。若手職人は会社の枠を越えてベテラン職人から技術を学ぶことができます。一般的に保守的で堅いイメージがある伝統工芸。それを覆したからか、今、タケフナイフビレッジには刃物職人を目指し多くの若者が集まってきています。
黒﨑さんをはじめ、タケフナイフビレッジの職人たちの夢は、越前打刃物の伝統を守り、発展させていくこと。そのため、職人自らが越前打刃物の販路開拓へ動き出しています。そんな中、若手職人が中心となって企画したのがアメリカ・ニューヨークでの展示会。福井の伝統産業、眼鏡枠や越前漆器とコラボした新しい包丁を作りました。果たして、越前打刃物は世界で受け入れられるのでしょうか?