其の43 現代開拓物語~おらほの木炭発電所~

2009年4月18日(土)(テレビ朝日OA) IBC岩手放送制作

20年前、日本で最後に電気が通った集落・岩手県川井村のタイマグラ。アイヌ語で「森の奥へ続く道」という意味の集落には、昭和35年頃から、一組の夫婦だけが暮らしてきました。その「日本一の山奥」と称せられる集落に、10年前、クマタカを追いかけて移住してきた一人の青年がいました。井上祐治さん。一流企業から動物写真家、そして、山里暮らし…。早池峰山のふところに飛び込み、力強い自然に守られ、時には対峙してきた井上さん。森のすぐそば(いや、森の中と言った方がいい)で暮らし、感じたことは、人は木と共に生きてきた…ということ。癒される…というだけでなく、木を燃料にするなど、適度に人間の手が入ってきたことが、元気な森を作ってきたという事実。「俺たちが日本のエネルギーを守ってるんだ!」高度成長期以降は何もないとされ、切捨ての対象になってきた山間地に誇りと力をもたらすべく、木から電気を作り出そうとしている男の物語です…!





◆オレは森の伝道師◆

野生動物の近くで生活したいという一心でタイマグラに移り住んだ井上さん。木を利用するほど山を知りたくなり、森に想いを至らす。森と人を近づける存在になろうと、その素晴らしさを発信中です。
◆田舎暮らし=覚悟+多面性◆
発信を続けるためにも、ここに住むと覚悟したら石にかじり付いてでも離れない。できることはなんでもやって大自然のなかで生活中です。
◆タイムマシンに乗れ!◆
山での生活にかかせない先達の知恵。ここから木炭発電も生まれました。
◆究極の手作り発電システムを作る!◆
過去から学び、未来を切り開いていく。そんな井上さんの夢は木炭発電に加え、水力発電に加え、空気の膨張力を使うエンジンを組み合わせた究極の手作り発電システムを作ること。既に材料集めに入っています。



◇ディレクター:IBC岩手放送 大柏 良◇
「木からガス?」そんなアイディアに、ものすごい先進性を感じてしまったのが2年前。岩手県内の別の市町村で、薪ストーブの1時間特番を取材しているときだった。ある町の森林組合の幹部の方が、「木をガス化して、各家庭にプロパンガスのように配れるようにしたい」なんて言ってるのを聞いて、「まさか、何年先の技術や!」と驚いていたら、実は戦前からあった技術だという…。最初は、ただ単純に、井上さんが作った木炭ガス化炉が、七輪と煙突を使った非常にポップな形をしていたのに惹かれた…という部分が大きかった(まあ、あんな形のものを作るなんて考え付く人が、面白くないわけが無いというテレビ屋的カンが働いたと言えなくもないが…)。しかし、結果として目の前に現れてきたタイマグラという集落とそこに住む人々は、非常に多くのことを教えてくれた。詳しくは本編を…(web公開していない場合はあしからず…)。
かなりな私事ですが、以前勤めていたテレビ局を辞めた後、一度長野県の黒姫山の麓に隠遁したことがあった。しかし、あえなく1年も持たずに失敗。故郷の岩手戻って、またテレビの仕事をしている(その間に、自分にとっていかに番組制作が必要不可欠なことか知ることができたので、とても大事な時間だったとホンキで思っている)。タイマグラは、以前の会社の大先輩が移住しているということや、自分が一度田舎暮らしに失敗しているということもあり、なかなか足が向かない場所であった。しかし、岩手に戻って7年目にして、初めて行ったタイマグラは…。林道に迷い込み、繁みから飛び出す山鳥にキモを冷し、目の前から脱兎のごとく逃げ去るクマに出会い(こっちが逃げたかったよ)というスペシャルなものだった。そして、期せずして大先輩が、この地に初めて入植し、ここで亡くなったおじいさんに感じたものと、同じ事をこの地に今も暮らす人々に感じた。「決して愛想がいい訳ではないが、拒否する感じもない」という、テレビ取材には最高の距離感。いつも心がける、取材者との距離感、一線を画すことを忘れてしまうような居心地の良さに参ってしまうところだった。
番組中、一番気に入っているのは、奥畑家の「しみほど」水鉄砲のシーン。恐ろしいほど手加減のない自然がとりまくこの地で生きてきたタイマグラばあちゃんから引き継いだジャガイモの保存食製造方法。これが、見事な水鉄砲になる!こんな単純なことだけど、5人の家族でこれを見て笑いあえる。生活を楽しむって、こういうことだよな…と実感できるシーン(と言っても、番組中5秒ほどしか登場しないのだが…)。どんなシーンかは、本編をごらんください(web公開していない場合はあしからず)。
最後に。これまた、タイマグラに移住した大先輩が、インタビューでおっしゃっていた言葉…。「ここで生き直すことができた」。行ってみて実感。行き直せる場所です。ただし、番組中で井上さんも言っているが、「覚悟が必要」。

渓雲荘 井上祐治さん
岩手県下閉伊郡川井村江繋タイマグラ
TEL・FAX:0193-78-2223
keiunso@taimagura.com

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