食の宝庫として知られる、福井県若狭地方のブランド「若狭ふぐ」。他の産地より水温が低い環境で育ったトラフグは、身がぎゅっと引き締まり、旨みをたっぷり蓄えています。「フグは冬」のイメージを覆し、一年中美味しく食べてもらおうと、地域一丸で頑張っています。
「蓄養」という珍しい方法で若狭ふぐを育てる今井清隆さん。春先に、産卵の為に湾内に回遊してきた天然のトラフグを買い付け、厳重な管理のもと、海のいけすで育てます。最近は天然のトラフグが減り、数を確保するのもひと苦労ですが、自然そのものの環境で育ったプリプリのフグは多くのフグファンをうならせる逸品です。
その貴重なフグを、若い感性を生かし、気軽に味わってもらおうというアイディアマンが、今井さんの息子、俊吾さん。経営するカフェで、フグのバーベキューやカルパッチョ、パスタを提供。これが、県内外からのお客さんに大人気です。
一方、フグをもっとリーズナブルに提供したいと「養殖」で若狭ふぐを育てる下亟親子。稚魚からおよそ2年かけ、2万匹ものフグの毎日のエサやり、歯切り、網替えなどの大変な作業を繰り返し、りっぱな若狭ふぐにするのです。下亟さんの宿で一押しのメニューは焼きフグ。肉厚で、ほんのり塩味の効いた焼きフグを目当てに、一年中お客さんが絶えません。さらに、今年は、夏向けのひんやりフグ料理を家族で考えました。
地元の調理学校の学生さんや、若狭ふぐ研究員も若狭ふぐのPRに一役買っています。
「若狭ふぐをもっとメジャーに!」「若狭ふぐのふるさと、若狭においで!」。若狭ふぐに関わる全ての人が、熱い思いに支えられ、今、頑張っています。


■ 材料
・トラフグ 半身
・フグのあら 1尾分
・大葉 1枚
・梅肉 1個分
・米 1合
・かつおぶし ひとつかみ
・昆布 4~5枚
・粉ゼラチン 5g
・塩 少々
・しょうゆ 少々
・氷 適量
■ 作り方
1. フグの切り身を炙る
2. 米を炊いておく
3. フグのあらを焼いて水の中に昆布と一緒に入れ沸騰させ、あくをとり漉す
4. 漉した出汁に塩と醤油を入れ、味を整える。(煮こごり用と出汁用半分)
5. 4.の半分に粉ゼラチンを溶かしバットに入れ冷蔵庫の中にいれ固める
6. 氷を砕いておく(クラッシュ氷)
7. 一番出汁と4の半分で作ったあらの出汁を混ぜ、冷やす
8. ご飯を丼に盛り付け大葉、炙ったフグ、梅肉をのせ、周りにクラッシュ氷と崩した煮こごりを散らす
9. 上から7をかける
※フグが用意できない場合は鯛などの白身の魚で代用してください。
編集後記
ディレクター:宮川 司(福井放送)
「若狭ふぐ」は福井県が誇るブランドです。ところが県内にはあまり出回らず、フグファンが多い関西方面に出荷されていきます。長く福井に住む私にも、これまでは、なじみのない食材でした。さらに、私だって「フグは冬に食べるもの」と思っていました。でも今回、てっちりやてっさだけじゃなく、フグのバーベキューやパスタ、ぶっかけ飯など、いろんな若狭ふぐに出会い、育てている人や調理する人の熱意を知り、目からウロコが落ちた思いです。フグは冬だけじゃない。決して高嶺の花じゃない。大きな可能性を持つ若狭ふぐ。すばらしい食材です。