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名古屋にある熱田神宮は古代から人々の信仰を集め、今も年間800万人の参拝者でにぎわいます。この境内に、数多くの参拝客が立ち寄る店があります。ここはきしめんの店。
平たくて薄い麺、それでいてうどんよりもちもちとした食感。濃い目のかつおだしに、ねぎ、油揚げ、かつおぶし、かまぼこ、ほうれんそう。シンプルな味のきしめんは、まさに「名古屋めし」の代表格です。
きしめんの麺はうどんと同じ、小麦粉と塩が入った水で作ります。工程はほとんど変わりませんが、一番の違いは「のばし」です。何度も何度も麺棒でまいてのばす。こうしてできた麺は薄くて平らですが、うどんとは違う独特の歯ごたえがあります。
きしめんは、味噌カツ、ひつまぶしといった「名古屋めし」の中でも、ひときわ古い歴史を培ってきました。しかし今、岐路に立たされています。愛知県民があまり食べず、きしめんの需要は減っているのです。名古屋市にうどん店を構える加古守さんは、「愛知の伝統食・きしめんを失くしてはいけない」と、愛知県きしめん普及委員会を立ち上げました。
そして2014年、大きなチャンスが訪れてきました。愛知県蒲郡市でグルメグランプリ「全国ご当地うどんサミット」が行われることになったのです。グランプリをとれば、復活につながるはず。加古さん率いるきしめん普及委員会は、新メニューでうどんサミットに挑戦します。
天下分け目、いや天下分け”麺”の戦いが始まります。
編集後記
ディレクター:佐藤 大介(名古屋テレビ映像)
味噌カツ、ひつまぶし、味噌煮込み。「名古屋めし」は有名になって、全国にお店が
広がっています。しかし今ではお客さんの大半が他の地方から来た人たち。名古屋の人たちは「名古屋めし」をあまり食べていない、というのが実状です。きしめんも同じ
です。
今回取材したうどん店のご主人が言いました。「なんといっても、きしめんを家庭で
食べないのがいかん。讃岐うどんがうらやましい。」香川県の人たちは、朝・昼・晩
どこかで讃岐うどんを食べている、と聞いたことがあります。日常的に食べる食事
だからこそ、地元の人たちにも愛されてきたのだと思います。
そんな私もきしめんをあまり食べていませんでした。しかし今回の取材で久しぶりに
きしめんを食べてみたら、やっぱりうまい!それからは日常的にきしめんを食べるようになりました。
「郷土料理が地域おこしの起爆剤」そんな言葉をよく耳にしますが、まずその郷土料理を多くの地元の人たちに愛してもらうこと。これこそが一番大切なことだと思いました。
番組情報
◆宮きしめん 神宮店
【住所】愛知県名古屋市熱田区神宮1-1-1 熱田神宮境内
◆名代きしめん 住よし
【住所】愛知県名古屋市中村区名駅1-1-4 名古屋駅構内
◆丸一(名古屋手打研究会)
【住所】愛知県名古屋市中区上前津1-12-26
【電話】052-322-3208
◆川鉦
【住所】愛知県名古屋市熱田区大宝3―15-6
【電話】052-682-0082
◆きさん
【住所】愛知県刈谷市一ツ木町7-14-1
【電話】0566-27-8537
◆角千本店
【住所】名古屋市北区西安味鋺5-113
【電話】052-901-8591