#79 海は橘、魚はエタリ ~幻の珍味をたずねて~

2012年12月23日(日)(テレビ朝日 放送) 長崎放送制作  協力 文部科学省

「エタリ」「エタリあります」…長崎半島と島原半島に抱かれた橘湾沿いを走っていると、こんな呪文のような看板が目につきます。なんとも不思議な響きですが、これはカタクチイワシのこと。橘湾で獲れる豊富な魚介類の中でも、特に「エタリ」は質量ともに優れているのです。

橘湾沿岸の地域では、このエタリを使った「幻の珍味」があります。それが「エタリの塩辛」。朝獲れたばかりのエタリに、たっぷりの塩をまぶし、稲藁とともに一ヶ月ほど熟成させたもの。「エタリ3匹、ごはん1杯」と言い習わされるほど、しょっぱいと言えばしょっぱいのですが、そこにはエタリが持つ甘みや旨味が奥深く隠されていて、病みつきになる人も多いのです。明治の初めには既に作られていたというエタリの塩辛ですが、冷蔵庫の普及や、食の指向の変化などから、一時は途絶えかけていました。しかし2005年、スローフード協会より、世界的にも貴重な「味の箱舟」の認定を受け、ふたたび注目が集まっています。

番組では、エタリの塩辛の数少ない作り手をはじめ、塩辛を使った料理を出しているお店や、新しい名物を開発中の地元の方々、原料となるエタリ漁、また、エタリのほとんどが加工されるイリコ生産の様子などを取材。エタリ、カタクチイワシという「小さな魚」を通して、日本の食文化や、それを支えてきた地域と人々を描きます。


◇ディレクター:下妻 みどり◇
「エタリ」という不思議な響きを初めて目にしたのは、もうずいぶん前に、橘湾沿いをドライブしていたときのこと。小さな魚屋さんに「エタリあります」と掲げられていました。「なんだろう?」と思いつつも、それがカタクチイワシであり、さらには、地元の人に向けた「塩辛できてますよ!」という意味であったということを知ったのは、2005年のスローフード協会による「味の箱舟」認定のニュースだったように思います。私も含め、長崎県内でも知らない人の方が多かった「エタリの塩辛」ですが、それを機に生産体制を整え、いまもメディアで取り上げられたり、地元以外の「ファン」が増えています。
約半年をかけた取材では、地元の方々がいかにエタリや塩辛を愛しているかだけでなく、それによって、これからの自分たちの生活や地域をより強く豊かなものにしていくのだ、という、単なる町おこしや名物作りにとどまらない、地に足の着いた思いを感じました。

ところで、かなり「個性的」なエタリの塩辛。私自身は「珍味好き」なので大好きですが、取材のときには、会う人会う人、口々に「大丈夫?」「食べられる?」と聞かれました。たしかに取っ付きやすい味ではないかもしれないけれど、母なる海から「魚」と「塩」が分かれ、それがふたたび出会って、そこへ「稲藁」という「土」の恵みも合わさって発酵したエタリの塩辛は、日本の風土そのものを凝縮したような豊かさと旨味をたたえています。みなさんもどうぞ、魅惑のエタリワールドへ足を踏み入れてみてください。

◆番組でご紹介した情報◆

■エタリの塩辛愛好会
【HP】 ホームページ

■天洋丸
(まき網漁船 塩辛、エタリクック、いりこの販売も)
【HP】 ホームページ

■小浜海産
【住所】 長崎県雲仙市小浜町マリーナ20-3
【電話】 0957-74-3966

■㈱ヤマジョウ 海の駅
【住所】 長崎県雲仙市小浜町富津
【電話】 0957-76-0400

■伊勢屋旅館
【住所】 長崎県雲仙市小浜町北本町905
【電話】 0957-74-2121

■長崎ペンギン水族館(エタリ生体展示)
【住所】 長崎県長崎市宿町3-16
【電話】 095-838-3131

■橘湾周遊グラスボートペンギン号
(ペンギン水族館そばより出航)
【電話】 095-818-1105

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