編集後記
					ディレクター:永井隆太郎(名古屋テレビ放送(メ~テレ))
「手に入るまで2年待ちのフライパンがある」。初めて聞いたとき、何がそこまで人を惹き付けるのか知りたくなりました。商品名は、「魔法のフライパン」。鋳物の常識を覆す厚さたった1.5ミリだというではありませんか。「けどそんなに他のフライパンと違うのか?」正直、半信半疑で取材を始めました。しかしその思いは、防塵マスクをして、フライパンを1個1個丁寧に磨き上げている従業員の姿を見て、すぐに払拭されました。作業が終わると、従業員の顔や手は真っ黒。「魔法のフライパン」は、熱伝導率がいいといったような科学的な根拠以上に、きっとこうした従業員の思いや努力が、フライパンを通して、購入者に伝わっているのだと思います。
「魔法のフライパン」の開発者である社長の錦見泰郎さんは、とにかく前向きで、自信にあふれた方です。これまで倒産の危機を乗り越えてきた人のたくましさを感じました。「逆境をどう乗り越えてきたのか」、「厚さ1.5ミリという薄いフライパンをどう生み出したのか」…そこには偶然のようで、錦見さんのひたむきさがあったからこそ発見できた必然のような、多くのドラマが隠されていました。きっと全国には、錦見さんと同じように窮地に立たされたことがある人がたくさんいると思います。そんな人は特に錦見さんの力強い一言一句から、勇気がもらえると思います。
番組内でも取り上げた、フライパン作りの全工程の機械化。錦見さんは、約8年間取り組んでいますが、残念ながら、取材日のも失敗に終わりました。その時も錦見さんは、こうおっしゃいました。「当然諦めてはいませんよ。続けるだけです。もうちょっとだ。」これまで4億円近くを投資し、それでも失敗が続いている状況にも関わらず、前を向き続ける姿勢には圧倒されました。これからも、錦見さんの「魔法のフライパンを世界ブランドにする」という夢に向かって走り続ける姿を、追いかけたいと思います。
余談ですが、私もさっそく「魔法のフライパン」を予約しました。届くのは2年後。魔法のフライパンを使って、どんな料理を作ろうか…今から楽しみです。