
下請けと呼ばれる3つの縫製工場が、世界中探しても誰も真似できないような、最高の仕立てと手頃な価格を両立させたスーツを作りました。
舞台は長崎県北部。ここに創業40年以上になる老舗の縫製工場があります。
男性用のズボンを作る「エミネントスラックス」(松浦市、創業1969年)。

オーダースーツのジャケットを作る「アリエス」(平戸市、創業1974年)。
シャツを作る「ジョイモント長崎工場」(北松浦郡佐々町、創業1967年)。
25年程前から、アパレル工場は安い労働力を求め次々と海外へ移転し、今や国内で流通している洋服の実に97%が海外生産です。日本の縫製工場は絶滅の危機!工賃が上がらないから給料も上がらず、人が集まらなくて技術の継承もできない。

同じ悩みに苦しむ3工場が生き残りをかけて新しいスーツブランドを立ち上げました。その名は「WESTORY」(ウエストリー)。日本の西から、もの作りの心、自分たちの物語を伝えていきたい。
新ブランド立ち上げまでの3年を見守ってできた番組です。
編集後記
ディレクター:古川恵子(長崎放送)
「これ本当によかばい!」―取材に行ったスタッフが、みんな感動してファンになる。家族を連れて、自腹で買いに行く。そこまでほれ込むことができる相手を取材する幸せな体験をさせて頂きました。
長崎県松浦市にある「エミネントスラックス」。スラックスしか作っていないことにまずは驚きました。ジャケットとズボン、同じ所で作っていると思っていましたから。工場の天井に張り巡らされた全長300mのレールに吊るされて、右へ左へ、スラックスはまるでワルツを踊るように軽やかに移動していきます。その下には、黙々と手を動かし続けるスタッフたち。立ちっぱなし、座りっぱなしの仕事です。「工場制手工業」「マニュファクチュア」…そんな、むかーし学校で習った言葉が頭に浮かんできました。ITが進化し続ける時代です。「いつかは全自動になるのでしょうか?」そんな失礼な質問に「生地は生き物。機械ではできないことが沢山あるんですよ」。人の身体にほどよくフィットする洋服を作ることができるのは人の手だけ。聞きたかった言葉が聞けたような気持ちと、半面、200人以上の人を抱える工場の未来を生意気にも心配する気持ちと…。複雑な思いでした。
間違いなく世界トップレベルの縫製技術を持つ3つの工場が、初めて表舞台に出る決意を固めた背景には、このままではつぶれてしまう…そんな切実で張り裂けそうな不安と、厳しい現実があります。
ものは作れても何を作っていいか分からない。ましてやどうやって売るかなど考えたこともない3工場です。3年かけてようやくスタートラインに立った新ブランド「WESTORY」(ウエストリー)。
まごころを込めた仕事が、一人でも多くの人に伝わりますように…。