
秋田県の中南部、大仙市。雪国・秋田の中でも特に雪深いこの町で、一人の外国人が暮らしている。
「まんづ、まんづ、降ったスな」。
秋田弁なまりの日本語ペラペラ、ポーランド出身のタベルスキ・マイケルさん(37)だ。
秋田にやってきたのは、16年前。まだ大学生だった二十歳のころ、仕事でポーランドに滞在していた妻・千秋さんと出会い、千秋さんの故郷・大仙市に移住することを決意した。でも、待っていたのはオシャレな東欧の街並みと真逆の、田んぼだらけの田舎での生活。
言葉は通じない、仕事もない。途方に暮れる日々が続いた。

そんな中で思いついたのが、母国に2000種類以上もある”ソーセージ”の文化を日本に広めること。独学でソーセージ作りを学び、3年前、かつてスーパーだった地元の建物を買い取って、肉の加工品を作る工場を構えた。名前はポーランドの頭文字と英語の”肉”をかけて「ポルミート」。ソーセージの本場・ヨーロッパから機械を取り寄せ、本場の製法で新しいソーセージを生み出している。今では県内のスーパーに専用コーナーが設けられているほどの人気ぶりだ。

ソーセージの材料にできる限り地元食材を使うのも、タベルスキさんのこだわりのひとつ。この冬に挑戦したのは、地元の養豚農家・佐々木 隆さん(71歳)が育てるブランド豚「杜仲豚(とちゅうとん)」を使ったソーセージだ。中国では漢方にも用いられる「杜仲の葉」を豚に与えることで、脂肪が少なく、いくら食べても飽きのこない上質な豚肉になるという。
秋田の食材を使ったソーセージを全国に売り込むことで、秋田の隠れた特産品にもスポットを当てていきたい。タベルスキさん、今ではすっかり”秋田県人”の自覚が芽生えている。

タベルスキさんの家族にとっても、今年は特別な年。長女の英美莉(えみり)さん(15歳)が、小さいころからの夢だったタカラジェンヌを目指して、宝塚音楽学校の受験に初挑戦する。およそ1,000人が受験して、わずか40人しか合格できない狭き門。厳しいレッスンを続ける一人娘に、特別なソーセージでエールを送った。
故郷の味でみんなを笑顔にするタベルスキさんの、熱い想いを伝える。
編集後記
ディレクター:泉 健太郎(秋田放送)
今回の主人公・タベルスキさんに初めて出会ったのは、2年前。
「はじめまして~。」
「どうも~、食べるの大好き、タベルスキ・マイケルと申します!」
「いや~、日本語お上手ですね。」
「いや~、サッと(ちょっと)しかわがんなくて。」
タベルスキさんの生まれ故郷は、ポーランド西部にある、ポズナンという都市です。中世にはポーランドの首都として栄えた街らしく、写真で見ると、なんとも華やか。秋田の農村にやってきたときのショックは、“推して知るべしか”と言ったところでしょうか。本人曰く「ポーランド人は、一度コレと決めたら徹底的に突き進む性分」自宅の車庫にソーセージの燻製室を作ってから1年間、実験を重ね、アッという間に企業。自社工場を構えてからはわずか3年で、40種類の商品を食卓に届けています。一人娘の英美莉(えみり)さんが一途に夢を追い続けるのも、そんな“親父の背中”をずっと見てきたからなのかもしれません。
今ではすっかり、秋田県人としての自覚が芽生えたタベルスキさん。
チーズ入りは・・・『ハイ チーズ!』
ベーコンは・・・『やっぱコレだベーコン』
お得な詰め合せは・・・『ま~いけるセット』
姉さん女房の千秋さんと考案したネーミングセンス溢れる商品で、目指すは全国進出です。
16年間の想いをたっぷり詰め込み、ダジャレをスパイスに効かせたタベルスキさんのソーセージ物語、朝食の時間にご家族で味わっていただければ幸いです。