#174 嵐のち"春" ~北星余市高 4年間の激闘~

2019年5月25日(土)(テレビ朝日 放送) 北海道放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ


中退、不登校、発達障害…北海道の北星余市高校には様々な問題を抱える若者たちがやってきます。1年生のサトシさん(15)は、小学6年生のときイジメを受けたのがきっかけで、「ゲーム依存」に陥りました。母親が仕事に出ると一人ゲームと向き合う毎日、しかし14歳になったとき「ゲームをやるのも辛いし、やらないのも辛い」という状況になり、自ら「病院に行く」と決意しました。主治医の「学生寮のある高校で規則正しい生活を送るべきだ」という言葉に、地元を離れ北星余市に入学しましたが、友達はできません。寮にひとりぼっちでいると考えてしまうのはゲームのこと…そんなサトシさんにようやく居場所ができました。


20年ぶりに余市に帰ってきた卒業生がいます。佐々木達也さん(39)は、去年新しくできた女子寮の寮父になりました。「北星余市には、他の高校にはない深さがある」そう語る19歳の佐々木さんの映像が残っています。教師を目指し大学に進み、卒業後はフリースクールに勤務しますが、29歳のときに閉校。その後は飲食店や農作業のヘルパーなど、職を転々とします。佐々木さんが寮父になる決意をしたのは、2年前に長女が産まれたこと…その言葉の意味は?


北星余市高校の廃校問題が報じられたのは2015年。存続を訴えてたくさんの人たちが行動を起こしました。当時の生徒会長が作ったラップはカラオケになるほどの反響を呼び、プロボクサーになった10年前の卒業生は「北星余市」と刺繍の入ったトランクスでリングに上がりました。経営母体である北星学園の理事会は「2019年度の生徒数が210人に達した場合、廃校案を白紙に戻す」という方針を示していましたが、その結果は…北星余市の「運命の春」と、4年間の激闘を見つめます。

編集後記

ディレクター:河野 啓(HBCフレックス)

北星余市高校に4年間吹き荒れた「廃校問題」という嵐は、今年春いったん収まりました。学校存続の条件として理事会が課した「生徒数210人以上」を達成したからです。もっとも学園は長期的な存続を確約したものではありません。学園全体の経営状況は厳しいままです。とはいえ、4年前の廃校確実というメディアの扱いと世の空気を思えば、まさに奇跡的です。逆転劇に一役買えたことを、私は誇りに思います。

プロボクサーの卒業生、太田さんは、デビュー以来4連勝でしたが、去年、東日本新人王の決定戦で初黒星。目の手術を受け、ちょうどこの番組が放送されるころ復帰戦の予定です。「北星余市」の刺繍が入ったトランクスでまたリングに上がります。

ゲーム依存に苦しむ1年生のサトシ君、寮父になって20年ぶりに余市に帰って来た佐々木さん、そして佐々木さんが初めて送り出す卒業生の奈那子さん。
3人ともキラキラした宝石のような言葉を語ってくれました。鋭い観察力、豊かな感受性、何より人の痛みに寄り添う共感力があります。

「こんなにも魅力的な生徒たちを、日本の教育は落伍者としてはじき出している。それは社会にとって大きな損失なのだ」という義憤にも似た思いは、この高校を取材し始めた31年前、25歳だったころの自分といささかも変わっていません。

20年前に取材した佐々木さんと思いがけない形で再会できました。ディレクター冥利に尽きます。同時に、「この続きを見たい」という視聴者に似た思いも、私の中にはあります。

おととしの「ラップで廃校阻止」前後編、去年の「廃校危機なら俺が行く!」に続く本作で、この番組での北星余市高校の特集は最後です。本当にありがとうございました。
視聴者の皆様には何らかの形で続編をお届けできるよう、奮闘努力してみます。

番組情報

◆北星余市高校
【H P】http://www.hokusei-y-h.ed.jp/
◆久里浜医療センター(ゲーム依存・治療)
【H P】https://kurihama.hosp.go.jp/

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