いまや全国各地に数多くいるご当地ヒーロー。その先駆け的存在が鹿児島にいます。
ロケットの発射基地や、サーフィンスポットとして有名な種子島で活動している、その名も「タネガシマン」。種子島征服をもくろむ「ジャアスロウ帝国」(ジャアスロウ=やっつける)の一団と日々戦っている・・・。という、島内では誰もが知る存在です。
種子島の中部、中種子町(人口8400人余り)のアクション好き青年団のメンバーが集って結成しました。島内で開かれる様々なイベントでの舞台出演の他、島外にも出没し島の特産品をあちこちに配ってまわるなどして、種子島のPR活動にも励んでいます。
ショーの特徴は、何よりそれが”オーダーメイド”であること。イベントの主催者に、業界の問題・課題を取材し、1回限りのどローカルな脚本を制作します。例えば、JAのまつりでのショー。「外伝第127話 牛飼ヒーローで農業を盛り上げろ!」では、台風でサトウキビやサツマイモに大きな被害が出たこと、その一方で、年間を通じて好調だった子牛販売の要素を盛り込みました。活動開始から20年が過ぎ、これまで演じてきた舞台はなんと300を超えました。
そんな舞台を作り上げるのは、「種子島アクションクラブ」の代表 髙磯勝俊さん(52)。衣装も、脚本もすべて手作りのタネガシマン。本業である農業の傍ら、日々寝る間を惜しんで、タネガシマンを演じています。タネガシマンはなぜ、島の人々から愛されているのか?そしてその舞台はどのようにして作られるのか。その秘密に迫ります。
編集後記
ディレクター:赤﨑 英記(南日本放送)
20年以上活動していることもあり、「タネガシマン」の存在は昔から知っており、地域おこしの一環でヒーロー活動をしているというイメージでした。去年、担当する情報番組の取材でみなさんのことを更に知り、驚きました。その活動は、毎回1回きりの15分ほどの舞台のためにオリジナルの脚本を作るという、手間も時間もかかるものでした。「いつも今回が最後のつもりで台本を書いている。だから出しきらなければならない」と話す髙磯さん。いつ終わっても良いように、最終回のシナリオはすでに書き終えているそうですが、今の忙しさを見ると最終回はまだまだ迎えられそうにありません。
タネガシマンには「地域おこし」という使命がありますが、取材を通して何より印象的だったのが、とにかくメンバー自身が楽しんでいること。「タネガシマンは遊び」と皆さんは話します。
50歳を過ぎて職が変わり、多忙な日々の中で、寝る間を惜しんでヒーロー活動に励んでいる髙磯さんをみて、同じものづくりの現場にいる私も大変刺激を受けました。これからのタネガシマンの活動が、ますます楽しみです。