#229 おいしい笑顔をつくりたい ~母なるレトルトスープ~

2020年8月22日(土)(テレビ朝日 放送) 大分放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

大分県豊後大野市。農業が盛んなこの町に小さな食品加工会社があります。株式会社成美。2012年に岩切知美さん(49)が起業した会社です。看板商品は地元の農作物を使ったレトルトスープ。手作りのため大量生産できない代わりに、小ロットの注文を受けることが可能なことから、委託製造の依頼も多く、アイテム数は約150種類に上ります。製造を手がけるスタッフ11人の大半が、子育て中の母親。岩切さんは、出勤日や勤務時間を家庭環境に合わせるなど、母親たちが働きやすい環境を目指しています。

40歳で起業した岩切さん。離婚をきっかけに「これから先の人生、このまま終わっていいのだろうか」と自問自答してたどり着いた答えが「郷土の味の伝承」でした。豊後大野市緒方町で昔からおもてなし料理として作られていたのが「鶏(とり)汁(じる)」。この鶏汁をよく作ってくれたのが、岩切さんの祖母でした。岩切さんはこの思い出の味を、次世代へつなぎたいと決意。鶏汁をレトルト食品として売り出しました。この鶏汁こそが成美の原点なのです。

母である岩切さんは、どんなに忙しくても毎朝息子たちの弁当を作っています。起業してから現在に至るまで、決して平坦な道のりではなかったものの、あきらめずに続けてこられたのは息子たちの支えがあったから。

今では、おばあちゃんになった岩切さん。仕事や家事・育児に追われる母親たちが簡単に調理でき、なおかつ赤ちゃんに安心して食べさせられる食品を作りたいという思いから、野菜を丸ごとレトルト加工したベビーフードを開発しました。
祖母の鶏汁から始まった、岩切さん第2の人生。食を通して伝えたい岩切さんの思いとは。

編集後記

ディレクター:田中智基(大分放送)

「まずは『はい』から始めよう」岩切さんと初めて出会ったときに彼女が言っていた言葉で、とても印象的でした。製造依頼の話などが次々と舞い込んできますが、どんなに難しい内容でも岩切さんは、まず受け入れます。そこからひたむきに試作品づくりに励む姿は多くの人に信頼を与えます。製造現場でも“大切な人に食べさせたいものをつくる”をコンセプトに、使う素材や味に妥協はありません。実際にレトルトスープ作っている現場を見ましたが、「その素材そんなに惜しみなく使っていいの!?」と突っ込みを入れたくもなれば、「味付けはたったのそれだけ!?」と驚くこともありましたが、いずれも素材の味を大切にしていることがよくわかりました。そしてそれは、商品を一度食べた人なら納得できると確信しています。
ふるさと大分県豊後大野市の郷土料理「鶏汁」を次世代につないでいきたいという思いから40歳で起業した岩切さん。人生の中でやりたいことを見つけ、それを形にしてゆく。多くの人が望んでいることでもあると思います。そんな志を持つ人たちに、岩切さんの姿は勇気と希望を与えるのではないでしょうか。
今回の放送にはありませんでしたが、岩切さんは学校で講演活動を積極的に行っています。これまでの人生を通じて、子どもたちに心の持ち方や生き方のちょっとしたヒントを伝えます。そこには、彼女の次世代育成という使命感があるからです。
今後、工場の新設や農業法人の立ち上げなど、まだ目の前に夢が広がっている岩切さん。彼女のこれからの生き方と、成美の新たな商品が楽しみでなりません。

番組情報

株式会社 成美
【所在地】大分県豊後大野市犬飼町柴北字市1099-2
【電 話】097-579-7177
【H P】https://narumi-oita.com/index.html

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