#253 笑顔の先に 〜私は日系ブラジル人落語家〜

2021年04月17日(土)(テレビ朝日 放送) テレビ朝日制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

今から約100年前、より良い暮らしを求め日本からブラジルに渡った人たちがいました。しかし、そこで待ち受けていたのは差別や貧困による辛い生活…それでも仲間と支え合い、笑い合い、つないだ日系ブラジル人コミュニティ。そんなルーツを持つ落語家がいます…。
“日系ブラジル人3世”の らむ音(ね)さん27歳。

5歳まで日本語が話せなかったらむ音さんですが、幼い頃から人前に出て周囲の人を笑わせることが大好きでした。表現することの楽しさは大人になってからも変わらず、大学卒業後は女優を目指し、小劇場で役者として活動を行う日々。その舞台を偶然目にしたのが現在の師匠でした。らむ音さんの天性の笑顔、明るさに引かれ、その場で弟子に誘ったという師匠…当初、驚いたらむ音さんでしたが落語の表現力や世界観に魅了され落語の世界へ。

弟子入り4年目となる勝負の年。落語独特の日本語表現などに苦戦しながらも、日々の厳しい稽古に励むらむ音さん。声がかかればカフェやスナックなど、どこへでも出向き落語を披露する毎日。心の奥底にあるのは「周りの人を笑顔にしたい」という思い…。

そう思うようになったのは、差別や貧困を乗り越えた日系ブラジル人の祖母…そして母からもらった「つらいことがあっても笑顔があれば乗り越えられる」という大切な教え。
そんならむ音さんの新米落語家として奮闘する日々に密着。失敗や困難を乗り越え周囲を笑顔に変える彼女…その不思議な力はいかに育まれてきたのでしょうか?
彼女の笑顔の先に見据える夢とは?

編集後記

ディレクター:土生拓海(テレビ朝日映像)

とにかく笑顔が魅力的ならむ音さん。彼女から出てくる言葉や奮闘する姿は驚きの連続でした。

弟子入りし4年目…披露する場所は、カフェやスナックなどの飲食店がほとんど。控え室もなく、高座もテーブルの上に座布団をひいただけ。まさに下積み真っ最中のらむ音さん。技術的にはまだまだですが、落語を披露する彼女の笑顔は、聞く人すべてを笑顔に変える不思議な力を持っています。日系ブラジル人=明るい…当初、僕は単純な見方をしていた気がします。

しかし、取材を進める中で気づいたのは、その明るさの裏には日系ブラジル人であるが故の苦悩…そして、100年前に海を渡った人々から脈々と受け継がれた思いがあるのだと。

言葉の違い、文化の違い、それが差別や偏見を生み、祖母・母・らむ音さん…3世代それぞれが辛い思いをしてきました。しかし、連鎖するのは辛さだけではなく、それを乗り越えようとする“笑顔の力”もまた同じ。だからこそ、今回の作品では彼女の笑顔を大切に描くことを考えロケや編集を行いました。

今、世の中はコロナで閉塞感が漂う空気になっています。こういう時こそ、「つらい時は笑顔で乗り越える」という、らむ音さんが祖母・母から学んだ信念は大事なことだと思います。

そんな“笑顔”に込められた力が皆さんに伝わると幸いです。

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