#349 がん患者に未来を ~世界をリードする医師~

2023年7月15日(土)05:20~05:50 (テレビ朝日 放送) テレビ朝日 制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

去年6月、アメリカ・シカゴで開かれた世界最大級のがんの学会 ASCO(米国臨床腫瘍学会)。ここで、がん治療を最も進化させた世界トップ4の1人に選ばれた国立がん研究センター東病院副院長の吉野孝之医師(52)。評価されたのは、ステージ4の大腸がん患者の4割を占める手術で切除できない種類のがんの研究。この種類のがんでは、どの治療法が最適か世界でもまだ答えが出せていませんでした。しかし吉野医師の研究チームは治験を通して、どの抗がん剤を使えば生存期間をより延ばせるかを証明したのです。

患者一人ひとりに最適な治療を届けたいという吉野医師は「仕事は交渉してネットワークを作ること」だと話します。学会のために訪れたシカゴでは、製薬企業や新興企業など3日間で30社以上と交渉を重ねました。型破りともいえるアイデアを実現させるためです。

その吉野医師を東病院に迎え入れたのが「若者、ばか者、よそ者」が口癖で、吉野医師を指導した経験を持つ大津敦院長。日本で問題になっていた「ドラッグラグ(海外で承認されている薬が日本では未承認の状態)」を解消しようと世界各国との国際共同治験に参加した大津院長は、吉野医師の自由な発想とチームをまとめる力に注目していたのです。

そして東病院で世界最先端のプロジェクト「SCRUM-Japan」が始動。これまで4万人の患者を対象にした治験が行われ「吉野チーム」からは14の治療薬と18の診断薬を生み出しました。いま東病院では、吉野医師を中心に様々な患者データを統合してスーパーコンピューターで解析、AIを使ってそれぞれの患者に合う抗がん剤をいち早く届ける仕組み作りを目指しています。しかし、構想はそれだけにとどまりません。吉野医師は「量子コンピューター」の導入を見据えてロンドンで非営利組織の会合にも出席。「これが世界のゲームチェンジャーになる。医療革命を日本から世界に発信して、その成果を患者さんにいち早く届けたい」と熱く語る吉野医師。その1年間を追いました。

 

編集後記

ディレクター:毛利哲也(フレックス)

豪快で、お茶目で、明るい親分肌。去年のシカゴや今年春のロンドンで、私が1人で撮影するロケ中も「足元に気を付けて」、とか、「夜、みんなでご飯食べるからおいでよ」と、さりげなく声をかけて下さる温かな気配り。もし自分が「がん」になったら、真っ先にその胸に飛び込んでいきたい。何よりも同僚や後輩たち仲間を大切にして、皆に慕われて…これほど人を惹きつける魅力に溢れた医師に、私は、これまで会ったことがありませんでした。

大切にしている“飲みニケーション”の場で、初対面の外国人を相手にしても「素」の自分をさらけ出しては、すぐに仲良くなって爆笑の連続で場を和ませる姿は、大学時代の親友・大井川先生が仰った「最高のお笑い芸人」そのもの。そうやって次々と仲間のネットワークを広げていく力は大津院長が仰った、まさに持って生まれた「才能」なのでしょう。「ビジネスマン」「医師らしくない医師」という例えは、ステレオタイプの常識ではとらえきれない吉野医師のありようではないでしょうか。

彼の根底に流れるのは「患者に最高の治療を届けたい」という医師としての本懐です。

口癖は、「この国で生まれた人や医療者たちが、この国に生まれて良かったというものを作らなきゃいけない」。きっとこの方なら古臭い既成概念や制度を取っ払い、日本から世界へ向けて医療革命を起こしていくはず、そう確信できた1年間の密着取材でした。

シカゴで“世界的な栄誉”となるプレナリーセッションを終えた直後の言葉が忘れられません。「新しい治療作っても自分でぶっ壊して、もっといいのを作りに行く。これを繰り返した時に、いつか、たった一錠の薬で全員が治る日が来る。そうしないと真の意味でハッピーじゃない」

彼の挑戦は、今この瞬間も続いています。私はこれからも吉野チームを応援していきます。

番組情報

国立がん研究センター 東病院
【住所】〒277-8577 千葉県柏市柏の葉6-5-1
【電話】04-7133-1111(代表)

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