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“光の稲穂”とも呼ばれる秋田市の秋田竿燈(かんとう)まつり。ろうそくを灯した重さ50キロの竿燈が、会場で一斉に上がる様子は圧巻。
竿燈を上げる演技は、力が4割、技が6割と言われる職人芸。竿燈会という団体ごとに、一年を通して練習が行われています。
38ある竿燈会のひとつ、上米町(うわこめまち)一丁目竿燈会はメンバーが100人を超える大所帯。この竿燈会の代表として、日々メンバーに技を教えているのは、29歳の貴志冬樹(きし・としき)さん。竿燈の技は経験者が若手に教える形で代々受け継がれてきました。上米町一丁目竿燈会では、若手が順調に竿燈の技を習得しています。
2歳で竿燈を始めた貴志さんに技を教えたのは、竿燈会の先輩でもある鈴木文明(すずき・ふみあき)さん。鈴木さんは、貴志さんをはじめ若手の育成に力を入れ、毎年まつりを楽しみにしてきました。しかし新型コロナでまつりが2年間中止になった最中、病気のため他界。2023年、貴志さんは鈴木さんへの感謝の思いも胸に、まつりに参加しました。
一方、人口減少や少子高齢化のあおりを受けて、まつりへの参加が危ぶまれている竿燈会も。西馬口労町(にしばくろまち)竿燈会は、竿燈を上げることができる演技者が、高校2年生3人だけ。まつり本番では、ほかの団体から演技者を借りることを特別に認められ、60年以上毎年まつりに参加してきた竿燈会の歴史を、2023年もなんとかつなぎました。
一見華やかに見える秋田竿燈まつりの裏側を描くことで、技をつなぐことの難しさや、伝統のまつりを後世につなげようと奮闘する貴志さんの思いに迫ります。
編集後記
ディレクター:齊藤弥(秋田放送)
「当竿燈(かんとう)会では、竿燈の差し手(演技者)が不足しており、募集中です。お問い合わせは…」。
たまたまSNSのタイムラインで目にした切実な投稿。秋田竿燈まつりは秋田が誇る夏の伝統行事です。すぐに投稿者のもとを訪ねました。人口減少、少子高齢化は、地方の伝統にも確実に影響を及ぼし始めています。
私が小さい頃から見てきた竿燈。6月に入ると市内の色々なところで聞こえてくる練習のお囃子の音は、初夏の風物詩です。しかし今、竿燈の演技者が不足し始めているという現象。もしかすると10年後、秋田竿燈まつりは存在しないのでないか…。伝統を次の世代に引き継ぐ良い方法は何か…。
番組では、人手不足に悩む竿燈の団体とともに、竿燈の仲間を集めることや、技を伝えることに奮闘する29歳の若い演技者の姿を描くことで、地域の伝統行事のありかたを考えられるような内容にしようと、取材、編集を通して悩み続けました。
毎年、変わらぬように見えるまつり。毎年、当たり前のように開催され、私自身、それが当然のように考えてきたことが、実は参加者の奮闘のもとに成り立っている現実。観光客はもちろん、秋田県民でも、まつり参加者でない人間には決して見えない部分です。そして、伝統は人と人の絆に支えられているということを、番組制作を通して実感しました。
伝統文化の継承は全国共通の話題。たくさんの人に、できればご自身の地域のことと置きかえながら、番組をご覧いただければ幸いです。
番組情報
上米町一丁目竿燈会(うわこめまちいっちょうめかんとうかい)
【HP】https://uwakome1kanto.com/
【メール】contact@uwakome1kanto.com