#213 みんなのロケット ~信州発!若きエンジニアたちの夢~

2020年5月2日(土)(テレビ朝日 放送) 信越放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

精密加工や自動車部品の製造が盛んな人口約20万人の長野県諏訪地域で、小型のロケットを飛ばすプロジェクトが進められています。携わっているのは、製造業などに勤める約20人のサラリーマン。岡谷市など地元自治体が各企業に声をかけ集まった「SUWA小型ロケットプロジェクト」のメンバーです。
プロジェクトは2015年からスタートし、航空宇宙産業参入への足掛かりや、ロケット作りを通して新たなものづくりに挑戦する技術者を育成するのが目的。信州大学が協力し「すべて諏訪の技術でエンジンや機体の設計、加工、組み立て、打ち上げをする」を合言葉にロケットを開発しています。活動は、平日の夜や週末が中心で、国や自治体から出る年間約3000万円の活動資金は、材料費や必要経費に充てられるため、メンバーの活動は、手弁当そのもの。

2019年度のプロジェクトリーダー、成田周介さん(38)は、岡谷市でF1マシンの部品や燃料電池車のバルブを手掛ける精密部品加工メーカーの技術者。「日ごろ仕事で作っているのは部品。ロケット作りは完成体がみられ、飛ばすことができるのが魅力」と語ります。リーダーとしてプロジェクトの進め方について、妻に悩みを打ち明けながら、家族の協力を支えに活動しています。ロケットの心臓部、エンジン設計を担当する田中雅樹さん(42)は、諏訪市の金属部品加工メーカーで、品質管理に携わっています。岩手県出身ですが「ものづくりに関わりたい」と諏訪地域の企業に就職。技術力を高めたいと、プロジェクトに参加しました。自宅でも頭からエンジンのことが離れず、子どもたちからは「ずっとパソコンいじっている」といわれるほどのめり込んでいます。

プロジェクトはこれまで、音速超えを目指して、秋田県の海岸で打ち上げてきましたが、2019年度は、地元から要望が強い諏訪湖で、安全に打ち上げることを主な目標に活動。シミュレーションでは、沖合約700mの台船上に設置した発射台からロケットを無線の指示で打ち上げ、自動で2段階にパラシュートを開き、着水する計画です。
2020年3月1日、成田さん、田中さんの家族をはじめ大勢の市民が見守る中、プロジェクトが初めて諏訪湖で発射したロケットは、果たしてシミュレーション通りに飛んだのでしょうか?

編集後記

ディレクター:富田 尚武(信越放送)

「取材なら元の保育園で週末に活動しているのでそこへ来てほしい」。プロジェクトのメンバーそうにいわれ、ロケットという最先端の技術と元保育園という組み合わせに興味を覚えたのが取材のスタートです。訪ねてみると聞こえてきたのは、草刈り機の音。やっているのは、業者ではなくプロジェクトのメンバーでした。腰の高さほどまで伸びた園庭の雑草を、慣れた手つきで刈っていました。

国や自治体から出るプロジェクトの資金は材料費や必要経費に回し、自分たちでできることはやるというのです。園庭は実験場で、エンジンの燃焼試験装置が格納されたコンテナが置かれていました。活動するのは、週末や仕事を終えた夜が中心で、人件費などは出ないという文字通りの“手弁当のプロジェクト”でした。活動の現場を訪ねると、専門用語が飛び交って喧々囂々の議論が続き、文系の私にはチンプンカンプン。あとで聞いてみると、エンジンを留めるネジの種類を決めていたとのこと。何十種類もあるエンジン部品のうちのネジ一つにも、細心の注意を払う技術者の姿勢に驚かされました。そんな彼らにプロジェクトへの参加理由を聞くと「会社以外の技術者と意見交換できる場があり、仕事では得られない経験ができる」「利害関係なく一つの目標に向かうことができる」と生き生きとした返事が返ってきました。だから彼らは、休日や一日の仕事を終えた夜遅くであっても厭わずプロジェクトに参加していたのです。

とはいえ、活動が続けられるのは家族の協力があってのこと。プロジェクトリーダー、成田周介さんの妻は、「自宅で愚痴をこぼすことも度々」とする一方、「一からものを作るのは大変そうだが、楽しんでやっているのでいいかな」。エンジン設計責任者、田中雅樹さんの妻は「仕事でぐったり疲れて帰宅することが多かった時、生き生きとプロジェクトの活動をする姿を見てやりがいを感じているようでよかった」と、温かく見守っています。

 諏訪湖でロケットを安全に打ち上げるというミッションが大成功に終わった彼らの目標は、「音速超え」=マッハ1を超える、こと。そのためには、越えなければならない壁がいくつも待っています。航空宇宙産業参入への足掛かりと地域の技術力の底上げのために活動する彼らの活動に引き続き注目していきたいと思っています。

番組情報

信州大学航空宇宙システム研究拠点
【住 所】〒380-8553長野市若里4-17-1(信州大学工学部内)
【メール】surcas@shinshu-u.ac.jp
【H P】https://www.shinshu-u.ac.jp/institution/surcas/suwa/

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