第36回 ハマのドン“最後の闘い”  ─ 博打は許さない ─

2022年2月5日(土)10:30~11:25 (テレビ朝日 放送) テレビ朝日 制作

権力におもねるのが当たり前になってしまった時代に、時の権力者に闘いを挑んだ男がいる。“ハマのドン”こと藤木幸夫、御年91歳。横浜市のカジノ誘致を阻止するために、人生最後の闘いに打って出た。
藤木は、港湾の荷役をとりまとめ、歴代の総理経験者や地元政財界に顔が利く保守の重鎮。菅前総理の支援者でもあった。
その藤木が、カジノを推し進める政権中枢に対して、真っ向から反旗を翻したのだ。今の時代が、戦前の「ものを言えない空気」に似てきたと警鐘を鳴らし、一人でも戦うと立ち上がった。
カジノに反対するわけ。それは家族が崩壊し、市民社会がおかしくなるから。港の労働者が辿った苦難、博打にはまった時代を誰よりも知るからこそ、博打は復活させないと宣言する。

撮影:堀内通利

藤木が立ち向かうその原点はどこにあるのか…。
先の大戦。横浜は空襲に見舞われた。戦時中、入学した学校の一画は軍需工場に転用され、藤木は飛行機の部品を造っていた。工場は米軍機の機銃掃射に狙われ、多くの友人を目の前で失った。自らの死も覚悟したと言う。そして、戦後の焼け跡。社会が殺伐とする中で、藤木は、街をたむろする不良少年たちを集めて地域に奉仕した時代があった。あの時の世のため人のため、皆で助け合って生きていく社会を取り戻したい…
そんな思いが今につながっている。

横浜市長選の藤木氏一方、横浜市民が、カジノの是非を問う住民投票条例を求めて集めた署名。その数、法定数の3倍を超える20万近くにも上っていた。だが、条例案は市議会で否決される。市民の声も届かない。夏の横浜市長選が決戦の場だ。そう思い定めた藤木が賭けたのは…。

ナレーション

リリー・フランキー 

©HIROSHI NOMURA

1963年、福岡県生まれ。イラストレーター、小説家、絵本作家、デザイナー、俳優、作詞家、作曲家などジャンルを問わず幅広く活動。2006年、長編小説「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」で本屋大賞を受賞。2019年、第42回日本アカデミー賞・優秀主演男優賞を受賞(万引き家族)

崔 洋一さん(日本映画監督協会理事長)

今どきのテレビにおける時事性を持ったドキュメンタリー、
なおかつ、全国的に話題になっていることに関しては、
スリリングでサスペンスフルなエンタメ的要素も求められる。
そして港湾労働は、いろんな意味での人間の根源を象徴しており、
思想の変化、時代の変化の中で労働形態も変わってくる。
藤木さんを通して描き出された、
生きる意味、男の矜持を
ぜひ感じ取って頂きたい。

森 達也さん(映画監督・ドキュメンタリー作家)

僕も2年前、政治をテーマにしたドキュメンタリーを撮りましたが、
腕章がないと記者会見も撮れないし、本当に悔しい思いを散々しました。
それで、見ながら思いました。
テレビが本気になれば、こんなスゴいもの作れるじゃないかと。
編集も見事です。微妙なコメントも非常に丁寧に、そして丹念に拾ってくれているのが
全体の完成度の高さにつながっている。
一言で言えば、とても面白かったです。ずっと面白かったです。

星野博美さん(ノンフィクション作家)

発信される情報がどんどんパーソナル向けのものになっていくなかで、
久しぶりに「マスコミの仕事」を見させていただきました。
企画段階ではハマのドンの、カリスマ性と政治力だけで横浜市長選を乗り切るのかと思っていたら、
横浜市民、カジノ反対の人たちがあんなに動いていたとは。
一視聴者として、非常にストンと胸に落ちる感のある作品でした。

 

予告動画

 

編集後記

ディレクター:松原文枝(テレビ朝日)

権力側にいた人物が、権力に対して、それも政権中枢に対抗するー

誰もがものを言わなくなり、権力になびき、忖度という言葉がはびこる中で、
行動したハマのドンの印象は強烈で、私たちに勇気を与えます。

藤木氏が大切にする”義理・人情・恩返し”。
文学を読み、社会の問題を考え、仲間と議論する。藤木さんの知られざる一面です。
藤木氏が市民の前で言い放った「いい悪いじゃないんだ。誰かの言われた通りに動いている」という言葉は、日本社会のここかしこに広がっていると思います。それは、思考停止につながります。今の時代が失った議論するということ、また、日本人が大切にしてきた社会の在り方を問うものにしたいと思いました。

取材はー横浜市長選の結果がどうなるか分からない、候補者も決まらない、ハマのドンが一敗地に塗れるとすら思われた状況でした。神経戦が続き、一体この結末はどうなるのか。審査員の森達也監督からは、結果が分からないからこそドキュメンタリーの醍醐味だと言われましたが、半年間、何がどう転ぶか分からない緊張の連続でした。当事者たちも同じだったと思います。

小此木さんがカジノ反対で出馬する、腸ねん転のような事態。一方で、反対派は乱立。それも有名人が乱立する。その中で、市民たちの自発的な行動は広がっていました。コロナ感染の状況やこれまでの市政への不信、様々な要素はありますが、カジノ反対を旗印として市民が結束したことは大きなパワーとなりました。

藤木さんの生き様、彼が背負った時代、そこには、私たちが共有すべき歴史があります。

戦争の現実、戦後の復興、地域を大事にし、祖先を人を大切にし、道理を説き、議論をする。まさしく、本来の保守ではないでしょうか。かつての保守は、言うべきことを言ってきました。人を動かす人間力。今の時代に、我々が学ぶことが大いにあります。

また選挙とは何か、人心が動くと言うことはどういうことなのか。
権力側にいた人物が権力に対抗する。市民と手を結ぶ。市民が主役。番組時間内では描き切れないことが多かったのですが、様々な場面一つ一つが示唆に富んでいます。

91歳の“ハマのドン”の人生、彼を通して同時代性を共有できればと思います。

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