第33回 想画と綴り方 ~戦争が奪った 子どもたちの"心"〜

2019年2月9日(土)10:30~11:25 (テレビ朝日 放送) 山形放送制作

タイトル

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農村が窮乏にあえぎ、娘の身売りが相次いでいた昭和初期、山形県の小学校で生活を見つめ表現する教育が行われていた。「想画」と呼ばれる生活画と「生活つづり方」と呼ばれる詩や作文が、山形県の小学校にたくさん残されている。その教育は村人の共感にも支えられていた。

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生活のありのままを見つめる教育を進めた青年教師、国分一太郎は、児童の一人一人に言を贈り、家族を助けて働き、たくましく生き抜くことを教えた。いま、90歳を超えた教え子たち。その胸に教えは刻まれていた。

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しかし国分の教育は「治安維持法」に触れるとされ、2年近くに及ぶ厳しい追及の末、有罪に。同じ時期、東北・北海道で大勢の小学教師が罪に問われていた。

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alt=国分を検挙し取り調べた特高係(特別高等警察官)は、若き日、白樺派に魅せられ、山形の社会運動のリーダーだった人物。その人、砂田周蔵は、満州での兵役後、特高に転身するという特異な経歴の持ち主だった。理想を覆し、なぜ弾圧する側に回ったのか、心の内を追う。

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国分は、戦後の生活つづり方運動が「戦後民主教育の金字塔」と脚光を浴びた頃、「北に向いし枝なりき 花咲くことは遅かりき」としたためた。後年それにつづけてこう書いた。

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国分が教壇を追われ80年、社会をしっかり見つめ表現する力は子どもたちに備わっているだろうか。そしてその教育は・・・。

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余 貴美子

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女優。神奈川県出身。
劇団活動を経て、映画・TVドラマへと活動の場を広げる。
08年、第63回毎日映画コンクール田中絹代賞受賞。
また同年「おくりびと」、09年「ディア・ドクター」、
12年「あなたへ」で、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を三度受賞するなど受賞歴も多い。

2019年度 JCJ賞を受賞しました
2019年日本民間放送連盟賞 最優秀賞 を受賞しました

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編集後記

ディレクター:伊藤清隆(山形放送)

日本が戦争に突っ込んでいく昭和初期、山形の農村の子どもたちは日常をどう過ごし、どんなことを夢見ていたのだろう。想画と綴り方という「タイムカプセル」を開けてみた。そこにあったのは、父母、家族の働きをしっかりみつめて思いやる心。朝から晩まで田んぼで腰をかがめ続ける母の姿、毎晩ぞうりをつくり続ける母の手のあかぎれ、家のため東京に身売りされた姉が残した筆、夕方、父母の帰りを待って背中で泣く幼い妹の心など、子どもたちのまなざしは生活のすみずみを繊細にとらえていた。「そのかなしみはなぜであるかを考えよう」と、つづり方や想画の教育を進めた青年教師の熱い姿は、90歳を過ぎた教え子たちの胸にいまもしっかり刻まれていた。同時に、その教育が罪とされたことへの疑問も消えることなくそのまま残っていた。

戦争遺品がネットで売買される一方、戦地から家族に宛てた手紙などあの時代の“心の証”
が世代交代とともにどんどん捨てられている時代だという。埋もれたタイムカプセルを掘り起こし、その中につまった“心”や“思い”を愚直に伝え続ける、その使命の一端を担えたのではないかと、長かった1年を思い返しながら少しの充実感に浸っている。平成が終わりまた新たな時代を迎えるいま、昭和のあの悲劇を伝えるバトンを、しばし、次のランナーに託したい。

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