其の40 メールより乾杯!~本当の地ビールが伝えるもの~

2009年2月07日(土)(テレビ朝日OA) IBC岩手放送制作

2008年、岩手にあるビールが誕生した。主原料である麦芽に、岩手で開発された大麦「小春二条」を使用。日本では、地ビールといいつつ、水だけが「地のもの」というものがほとんど。挑戦したのは、岩手県一関市で、江戸時代から続く造り酒屋の4代目・佐藤航さん。しかし、問題は麦芽の製造。手間と設備投資が莫大なため、国内には大手ビール系の工場が2社あるだけで、少量単位の麦芽を製造・販売できるところがない。しかし、熱いビール醸造士の想いが、地元の力を呼び起こす!麦芽製造に名乗りを上げたのは、地元農家の小野さん。稲の育苗器、しいたけ乾燥機など、既存の設備を使用。そこに、創意工夫と改良を加え、独自の麦芽製造方法を作っていった。2008年春、1回目のビール製造は成功したが、冬の2回目の仕込には、またまた様々な障害が。しかし、また集まってくる地域の力…。本当の地ビール作りから見えてきたのは、古くて新しい地域の姿だった。



◆手作りに大事なもの 数値化+感覚◆
航さんたち3人の醸造士は月に1回、同じ種類のビールを集めて味の分析を行います。絶えず客観的に自分たちのビールを捕らえ、それを足場にして、より上を目指しているのです。
「糖化した麦芽を重力を使ってこっちのタンクに移動するが、このスピードを、早すぎず、遅すぎず・・・。というか、せっかく糖化しても、早すぎて十分取りきれていないとビールの収量が落ちる。遅すぎると糖以外のタンニンとかが入って渋みが出る。10分で120ℓとか教えるが、それだけでもない。実際に目で見て、スピードどうなっているかという感じを一緒に教えていかないとうまく行かない。」
◆百通りの喜びのために◆
そして、効率化とは相反するような多品種開発で、売り上げを伸ばしてきました。
「480円も払っても蔵ビールが飲みたいというものを・・・青いの、牡蠣入ってる・・・。100人の中に、一人の強烈なファンを。そして、100種作って100人喜ばす」
◆思いこそが美味しさの源◆
国内ではほとんど行われていない少量単位の麦芽生産にも参加。農家の方の思いを受け、そこに自分の思いを込め、今日もビールを仕込んでいます。
「究極は、地元の人が外の人に、地域自慢が出来ればいいなあって。地域自慢の一つのアイテムにビールがあればいいなあって」
◆夢…100%地ビールを作る◆
そして、またまた、やりたいことが体の中からフツフツと沸き上がってきているようです・・・。
「ホップは本気で考えている。やった方がいい。やりたくなってる、今は。麦芽もやりつつ、ホップもやりつつ・・・」
夢の100%地ビールは、きっと故郷を、もっともっと元気にしてくれるはずです!

◇ナビゲーター:奥村 奈穂美(IBC岩手放送アナウンサー)◇


◇ディレクター:IBC岩手放送 大柏良◇
・ 主人公の航さんの、キラキラした目力にやられたのが2年前。「この人はいつか取材したい…!」そう思って、1年後ほどに登場したのが、地元生まれの大麦を、地元で麦芽に加工して作ったという「こはるビール」。航さんの強力な助っ人が、小野さん。好奇心旺盛な還暦イブの農業マン。麦も麦芽も、大量生産、大量加工が、安く安定した品質にするためにはいいのだが、何せ栽培面積20a、収穫量600キロの少量。これを2人が中心になって、ビールを丹念に作り上げていく。その過程を追ったのがこの番組。色々と番組中に入れられなかった素敵な言葉達を書き加えておきたい。

・ 「山椒」「牡蠣と柿」「ラオホ」「マンゴー」「桑の葉」
…航さんが作りたがっているビール。2008年秋に誕生したホヤ、ワールドビアカップで銀賞を獲ったオイスタースタウト、業界の常識を破った青いビール「サムシング・ブルー」など、何でもビールにする創造性。しかも、いわゆるゲテモノではなく、しっかり美味しいのがすごい。とんがった商品を、妥協なく美味しく仕上げる…。小企業である我々にとって、勉強になるお話だった。(ちなみに「マンゴー」は今の宮崎県知事誕生前に醸造したが失敗。「桑の葉」はスタッフ内でも賛否が分かれている幻の一作)

・ 「こんな世界に入りたい…」
…年に1度、宮城大学の学生さんに「商品開発」について講義している航さん。「我々零細企業は、小回りが利くのが利点。マーケティングリサーチしてるお金はないので、いいと思ったら売る!そして、地元が誇りに思えるものを作る。街づくりも商品作り」と話した。それを聞いた学生さんが言った言葉がこれ。「面白いというか、予想外。青いビールは衝撃的だった。こういう世界に入りたい」。熱い言葉で、回りの人を巻き込んでいく航さん。情熱的。

・ 「酒屋のビール会社だから」
…今回は失敗した地ビール作り。リスクが高いのに、なぜそこまでこだわるのか…と航さんに伺ったところ、帰ってきた答え。「日本酒は、もともと農業の発展系。地域でこさえた米を、夏は農業をしている杜氏が作る。ビールは地元との密着が少ない。そういう地ビールは地域に根付かないのではないか」と話す航さん。取材当初は、ただ無鉄砲に「面白そうだからやってる」大きな子どもたちなんじゃないか…と思っていた(そこにも魅力を感じていた)。しかし、大間違い。生産者、加工業者、消費者が直接ふれあいながら循環していくシステムを作るという大望、ビジョンを持っての挑戦。そして、そこには本当の人の交流が生まれる…というのが、今回のタイトルに込めた思いだ。メールで送りっぱなしで済ます現代の風潮は、効率化という名の下、分業化(分断化)が進んだ社会の一面が現れているという、深い(遠いなあ…)思いがこめられているのだった!

究極の地ビール・『こはるビール』・世嬉の一酒造(岩手蔵ビール)
醸造士:佐藤 航
TEL:0191-21-1144農事組合法人アグリパーク舞川 専務理事:小野 正一
TEL:0191-28-2751
※月・水・金のみ、問合せ可

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