其の79 　わたし、八百屋です。先生やってます。

川合久利子さん（42歳）。ワゴン車に野菜を積み込んで売り歩く移動八百屋さんをしています。教員免許をもっている川合さんは別の道を選びましたが、元々美術教師になるのが夢でした。平成17年、地元テレビ局の「夢を叶える事を応援する番組」がきっかけで、母校の中学校で1日教師を体験します。取材後、川合さんの模擬授業の内容に惚れ込んだ校長先生から「番組とは関係なく学校に来てほしい。」と熱望され、川合さんも快諾。週1日、1年間講師として通いました。普通の先生と違って、「地域のおばさん」で、「人生のちょっと先輩」的な存在。見た目は美人だけど、話すと近所のおばちゃん。そんな所が受けています。地域のおばちゃんの目線のまま、子ども達と関われる川合さんの評判を聞いた隣町の教育委員会から声がかかり、現在は別の中学校で週2日、美術の講師を務めて2年半がたちます。番組はそんな川合さんと生徒の交流を追いかけました。

◇ディレクター：中村 友紀◇
「あのとき、福井のローカル番組で夢を叶えたことが私の人生を大きく変えました。」私たち取材班が川合久利子さんに４年ぶりにお会いした時、言ってくださった言葉です。１日教師から４年、今の川合さんはたくさんの生徒から頼りにされ、「川合先生」が板についています。川合先生が生徒にかける言葉には、ご自身がそうだったように、『本気でなりたいと強く思えば、なりたい自分になれるんだよ。』という気持ちが込められているように思います。そしてそれは、中学生だけでなく、大人になった私たちの心にも真っ直ぐに届きました。「人は常に成長し続けることができる」そんな気持ちになれた取材でした。