
寒いけど美しい、寒いから美味しい! 北海道の幌加内町(ほろかないちょう)は、そばの生産量、作付面積ともに日本一。この町では1年を通して、そばをめぐる何らかのプロジェクトが展開されている。5月、雪解けが始まると、そば農家の澤田勲さんは畑に残った雪の山からそばを掘り起こす。冬の間雪の中で保存していたのだ。「雪の中は0・3度に保たれる。そばが熟成されて甘みが深くなる」と話す。
町内のそば店主らは3月の冷たい川に、そばの実を沈める。これを店で出すのは3か月後の6月…その理由とは…。

町立の農業高校では、全国に例のない壮大な試みが始まった。そば打ちの授業(これまたユニーク)で使い終わったそばを豚のエサにする研究、その名も「そば豚プロジェクト」。そばを食べさせたら、果たして豚の味は良くなるのか? 町長も参加した試食会では意外な結果が!

マイナス41.2度を記録したこともある酷寒の町で、そばプロジェクトに邁進する熱き人々…。
幻想的なサンピラーやそばの花など、四季折々の美しい絶景を織り交ぜながら、そばの町の1年を見つめた。
編集後記
ディレクター:河野 啓(HBCフレックス)
「どこかのマチを1年見つめてみたい」今回は先にそんな考えがあって、情報収集と選定作業に入りました。幌加内町に決めたのは、季節ごとの表情の変化が大きくかつ美しいこと、魅力的な人がいること、そして日本一の名産があることでした。通ううちに町立の農業高校が全国に前例のない「そば豚プロジェクト」を始めることもわかって、番組はどんどん膨らみ、中身も濃くなっていきました。全国唯一の「そば打ち」授業で使い終わったそばを「捨てずに豚のエサにする」…ゴミの量が減る上、養豚農家にとってもエサ代の削減になって一石二鳥、しかも健康食のそばを食べさせることで豚の味も良くなるなら一石三鳥です。ワクワクしながら試食会の取材に臨み、私自身は味覚テストでそば豚を選びました。
寒いけど、この町にはそばがある。寒いから、そのそばが美味くなる。地に足の着いた取り組みに共感を覚えました。幻想的なサンピラーやそばの花の「白いじゅうたん」など1年通うに値する美しい映像も撮影できました。何だか名残惜しく、もう1年通いたい気さえしています。