#74 森とパンと古民家と ~笑顔がいっぱい"きらめ樹"隊!~

2016年12月18日(日)(テレビ朝日放送) 信越放送制作  協力 文部科学省/独立行政法人 中小企業基盤整備機構

chikara74-1.jpg
長野県安曇野市の鈴木寛さんは、荒廃していく里山をなんとかしようと間伐材を燃料に薪窯のパン屋を営んできました。しかし、山の持ち主に言われたある言葉をきっかけに、薪として燃やす以前に、間伐材をもっと有効的に活かせる方法はないかと考えるようになりました。そこで始めたのが、誰もが気軽に山の手入れをすることができる”きらめ樹”の活動でした。

chikara74-4.jpg
“きらめ樹”とは、木の皮をむき、そのまま1年以上自然に乾燥させてから伐採するという間伐方法で、切った材は水分が抜けているため、重機を使わなくても運び出せるというメリットがあります。山の持ち主とは、無償で手入れをする代わりに切り出した間伐材は自由に使わせてもらうという契約を結び、自分たちで板材や木工品などに加工して商品化しています。

chikara74-2.jpg
この方法を考え出した静岡県富士宮市のNPO森の蘇りの大西義治さんは、全国各地で”きらめ樹”の必要性や可能性を伝えてきました。活動に共感し賛同する人々は徐々に増え、それぞれの地元で”きらめ樹”を進めています。

薪窯パンの新店舗として購入した古民家の改修に、”きらめ樹”の木材を使うことにした鈴木さん。大西さんや仲間たちと連携しながら、間伐材の有効活用の道を探ります。
放置された暗い森を、再び光の差し込む緑豊かな森に蘇らせるために、将来を見据えて自らの足で一歩を踏み出した人々の姿を紹介します。

編集後記

ディレクター:笠井直美(信越放送)

日本は、森林が国土の3分の2を占める世界有数の森林大国。しかし、木材の輸入量も消費量も世界トップクラスで、回復傾向にあるとはいえ木材自給率は約30%となっています。戦後、国策で植えられたスギやヒノキは、樹齢50年を超えれば木材として十分に値が付き黒字にもなる太さに育っているはずですが、手入れの行き届かなくなった暗い森では成長できなくなっているのが現状です。伐採した木の年輪を見れば一目瞭然で、今回の取材でも15年目ぐらいのところから間隔が詰まっている木がほとんどでした。

「行政からの補助金がなければ手入れができない」という現代の林業が抱える問題とは一線を画し、日本の森を、世界にまで目を向けて、自分たちの手でどうにかしようと動き出したのが、今回ご紹介した皆さんです。豊かな自然を未来に引き継いでいこうと行動を始めた皆さんは、日本の森のみならず、広く地球環境を守る救世主のようにも感じられ、私は勝手に「“きらめ樹”隊」と呼ばせてもらうことにしました。活動を生み出したNPO森の蘇りの大西義治さんは、関心を持って集まった人々を前に、「一人の力は微力でも、無力ではない。みんなの力を合わせれば、日本中の森が変わる!」と語ります。そこには強い信念があり、未来を明るくする大きな可能性を感じました。木の皮を剥き、自然に乾燥させてから間伐する“きらめ樹”は、山の持ち主の理解がなければ始められません。手入れをしたくても自分ではどうすることも出来ずに困っているという方にこそ、知っていただきたい活動です。

取材で訪れた暗い森は、地面がまっ茶色で、木も今にも倒れそうなほど細く、痛々しい感じがしました。しかし、“きらめ樹”を始めて4年経った森は、光が差し込み、緑が復活していて、清々しい心地よさを感じました。この違いが、とても強く印象に残っています。もちろん、木の皮を剥くのも初めてでしたが、皮を剥いた木肌は瑞々しく生命力が溢れていて、これも、いまだかつてない感触でした。実際に自分の手でやってみると、大人も子どもも、年齢も性別も関係なく、なぜだか皆の顔に自然と笑みがこぼれてくる、そんな“きらめ樹”です。身近な山や森の様子を見て、何かモヤっとしたものを感じたら、気軽に出来るこの間伐方法があることを思い出していただければと思います。

番組情報

◆きらめ樹 森の蘇り
【H P】http://mori-no-yomigaeri.jimdo.com/

◆ベッカライ麦星
【H P】http://www.mugiboshi.com/

ご意見・ご感想

皆さまからのご意見・ご感想をお待ちしております。
お寄せいただいたコメントにはすべて目を通しておりますが、必ずしも掲載されるものではございませんのでご了承ください。
なお、企画提案、商品宣伝、イベント告知等に関する投稿は固くお断り申し上げます。

※ 記入欄に、お住まい(都道府県)もご記入いただければ幸いです(任意)