
島根県本土から北へおよそ70kmの沖合に浮かぶ離島・隠岐島(おきのしま)。およそ2万人の島民が暮らすこの島には、長い間、犬や猫といったペットの動物病院がなく、”無獣医地区”と言われていた。万が一、島のペットがケガや病気にかかった場合、飼い主はフェリーや飛行機を使って本土に渡り、1日がかりでペットの治療を受けた。

この状況を改善しようと、4年前、ついに島に動物病院が誕生した。週に一度だけ開かれる、その名も”隠岐の島動物病院”。普段は本土の動物病院で診療している複数の獣医たちが、毎週土曜日と日曜日にローテーションで島に渡り、当番で診療を行う。離島で開業しようと考える人が20年ちかく現れないなか、負担を分散するこの仕組みによって島での動物医療が実現した。開業以来島の飼い主から大きな反響を呼び、病院は毎週たくさんのペットたちであふれていた。

しかし、その運営は順風満帆とはいえず…。参加する獣医は年々減少し、一人一人の負担は増えた。悪天候になれば島に渡れず、休診を余儀なくされることもあった。それでも、島に渡り続ける獣医たち!”ペットを救いたい”と奮闘する彼らの使命感と、彼らを待ち続けるペットと飼い主の想いに迫ります。
編集後記
ディレクター:伊藤裕介(日本海テレビ)
20年近く開業する獣医が現れなかった離島に、
はじめて誕生した「隠岐の島動物病院」。
“待ってました!”と、病院に絶えずやってくる島のペットと、夜遅くまで診療するタフな先生、そして、笑顔で帰っていく飼い主さん…。(また、島で出会ったワンちゃんネコちゃんのかわいいこと…)単純に、“あぁ、島に病院ができてよかったなぁ…”と、取材して思った去年の夏。
でも今は、病院のメンバーが減り、獣医一人ひとりの負担が増え、病院の運営は、先が見通せない状況にあります。本音をいえば、島に常駐してくれる獣医さんが現れることが、先生たちの一番の願い。それでも、待っているペットと飼い主のため、毎週、島に渡り続けています。皆さんを支えているのは、ペットへの愛情と、強い使命感です。
この番組が、ほんの少しでも、島の動物医療の力になれたら本当に幸いですし、これからも、何か力になっていければ、と思っています。