
福井県越前市今立地区。日本一の生産量を誇る「越前和紙」の産地です。今から1500年前、紙祖神「川上御前」が紙を漉く技術を伝えたと言われています。
今、産地で注目を集めている女性職人が二人います。一人は短大を卒業し、京都から福井に移住した村田菜穂さん(40)。「和紙で服が作ってみたい」と紙漉き職人になった村田さんは手漉き一筋20年。今では国が認定する伝統工芸士の資格を持ち、地元の職人たちに技を教えるほどの腕前です。

注目の女性職人、もう一人は町最大の手漉き和紙工場4代目・岩野麻貴子さん(49)。2年前に亡くなった先代が情熱を注いだ岩野家伝統の和紙「打雲」を受け継ぎます。和紙に雲の模様を漉きこむ熟練の技です。
歴史がある越前和紙ですが、年間売上は平成2年の93億をピークに年々減少。今では30億円まで落ち込んでいます。不況の波は村田さんが働く製紙所にも押し寄せ、工場は倒産。

心機一転、村田さんは人間国宝の元に弟子入りし、さらに技を磨くことにしました。そんな中、奈良・東大寺から大きな仕事の依頼が舞い込んできます。一方、4代目岩野麻貴子さんは東京で「打雲」の売り込みに挑戦です。
繊細で根気のいる紙漉きの仕事。だからこそ女性の頑張りが生きてきます。越前和紙の未来を、二人の女性職人の姿から探ってみます。
編集後記
ディレクター:久保田 守(福井放送)
今回の番組はテーマが先に決まりました。「1500年の伝統がある越前和紙」。このテーマをどんな切り口で描くのか…1年半前、何度も何度も和紙の里・越前市今立に足を運んだことを思い出します。そこで出会ったのが今回の主人公の一人、村田菜穂さんです。私と同世代の菜穂さんは、越前和紙史上最年少で伝統工芸士の資格を取り、先輩の職人たちのお手本になるほどの腕前でした。ところが村田さんの働く和紙工場が倒産。取材の着地点が全く見えないまま、村田さんの「前を向こう」という姿勢と頑張りに、ただただ密着させていただいたという思いです。
取材をスタートさせたときにもう一人、注目していたのが、老舗・岩野製紙所4代目の岩野麻貴子さんです。2年前に先代の父親を亡くしたばかりで、当時の麻貴子さんは「先代の事業を覚えるのが精一杯です」と答えるだけでした。伝統の技を受け継ぐ職人として、30人の従業員を抱える社長として奮闘する麻貴子さん。どのように道を切り拓いていくのか、取材をしながら応援したいと思ったのです。
2人とも40代。ガッツあるこの2人が越前和紙の中心となっていきますように。そんな願いを込めて番組を制作しました。
番組情報
◆福井県和紙工業組合
【住 所】福井県越前市新在家町8-44パピルス館内
【電 話】0778-43-087【FAX】
【H P】http://www.washi.jp/
◆岩野平三郎製紙所
【住 所】福井県越前市大滝町27-4
【電 話】0778-42-0042