#131 私の仕事は八雲塗 ~漆に魅せられた女性職人~

2018年5月19日(土)(テレビ朝日 放送) 日本海テレビ制作  協力 文部科学省/独立行政法人 中小企業基盤整備機構

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島根県松江市の伝統工芸・八雲塗。松江藩のお抱え塗師だった坂田平一が、明治初期、松江の新しい産物として考案した漆の器です。鮮やかな色合いで落ち着いた美しさがあり、時間が経つほど文様がさらに綺麗になるという不思議な特徴も持っています。かつては地元の家庭でお馴染みの器でしたが、時代の流れとともに需要が減り、工房も少なくなっていきました。

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八雲塗を製造・販売する松江市の山本漆器店では、工房で3人の職人が作品を作っています。30年前から工房で働くベテラン塗師の松原昭さん(75)と、二人の女性職人。絵師の荒木広美さん(58)と新米塗師の篠原愛海さん(23)です。二人とも県外からIターンでやってきました。細長い工房なので、3人横に並んでいます。

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去年の春、広島県からやってきた篠原さんは、大学時代から漆を専攻するほどの漆好き。美術館で出会った細密な漆芸作品に衝撃を受け、自分でも作りたいと思ったそうです。新卒で職人になり、師匠・松原さんの指導のもと日々腕を磨いています。

八雲塗の世界ですが、甘くありません。一人前になるには10年かかり、篠原さんのような駆け出しの職人にとって、それだけで生活するのは厳しい環境です。

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加えて、漆に負けて手がかぶれたり、長時間の座りで腰を痛めたり…。それでも職人たちは黙々と作品に向き合います。きょうまで伝統を支えてきたのは、この人たちのように”もの作り”に楽しさや生きがいを見つけた人たちだったのではないでしょうか。

篠原さんは言います。「100年後の人たちに『自分は作れない』って思われるくらいのものを作って、残したい。」小さな工房の物語から、彼女たちの作品にかける思いを感じ取っていただけたらと思います。

編集後記

ディレクター:伊藤 裕介(日本海テレビ)

私自身、あまり馴染みのなかった伝統工芸。夕方ニュースで地元の八雲塗を取り上げることになり、工房を訪ねると…それらしき男性と、一見それらしくない女性が2人。狭い工房に3人横並びで、和気あいあいと作業をされている姿が印象的でした。聞けば、篠原さんは長時間の座りで腰を痛めて病院へ行き、荒木さんはいくら粒のようなかぶれが顔や手にできて病院へ…。そんなキツイ世界にもかかわらず黙々と作業を続け、作品について尋ねれば嬉しそうに応えてくださる皆さんを見て、本当に、純粋にこの仕事が好きなんだろうなぁと感じました。各地で衰退しつつある伝統産業ですが、きっとこういう人たちがいる限りこれからも残り、人々を魅了し続けてくれると信じています。辛いこと以上に“楽しさ”がある工房から醸し出されるあたたかい雰囲気…。朝、ふと目にした人に元気を与えてくれるような番組になったのではないかと思います。

また、工房のわずかな空間での取材は、職人さんたちにもかなり迷惑をかけました…。大きなカメラやマイクでガチャガチャと…。さらに漆塗りたての作品にぶつかって一個落とし、思わず素手で拾ってしまうなど、迷惑のかけっぱなしでした。ちなみに漆のかぶれはしばらく潜伏期間があるらしく…、とりあえず2018年5月現在、私にかぶれは出ていません。

番組情報

◆八雲塗やま本
【住 所】〒690-0843 島根県松江市末次本町45
【H P】https://www.yakumonuri.jp/

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