#130 女性銭湯絵師が描く未来 ~富士山への想い~

2018年5月12日(土)(テレビ朝日 放送) テレビ朝日制作  協力 文部科学省/独立行政法人 中小企業基盤整備機構

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日本独自の文化銭湯。銭湯は昔、町の社公場でもあり、癒しの場でもありました。その壁面に描かれている大きな富士山のペンキ絵は銭湯に行った事がない人でも、イメージできるほど日本人の生活に馴染んでいます。
その富士山のペンキ絵を描く事を専門にする職人がいます。その職業は銭湯絵師。しかし、銭湯の衰退と共に、絵師もいなくなり、現在日本で3人しかいないと言われています。

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そのうちの一人、ペンキの銭湯絵を100年後にも残そうと伝統を受け継いだ1人の女性銭湯絵師がいます。田中みずきさん(35)。大学で美術史を専攻していた彼女は、卒業論文のテーマに銭湯のペンキ絵を選びました。調べていくうちに、銭湯のペンキ絵に魅了され、さらに絵師も少なくなっている事をしり、この文化を残すには自分が描くしかいないと思ったそうです。

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銭湯でのペンキ絵制作は体力勝負と時間勝負。どんなに大きなペンキ絵も銭湯の営業日に影響しない定休日の一日で仕上げなくてはなりません。文化を後世にも残す、技術だけではなく、ほとんどの人が知らない制作の過酷さがあります。その制作の現場には彼女をサポートする旦那さんの姿がありました。

現在みずきさんの仕事は銭湯だけでなく、飲食店や介護センター、そして個人宅など様々な場所へと広がり続けています。 chikara130-4.jpg
描くのはあくまで銭湯のペンキ絵。銭湯に行った事がない人でも別の場所で絵を見て知ってほしいという思いがあります。銭湯の数は年々減っていますが、彼女の行動から銭湯のペンキ絵という伝統は別の場所で未来へと残っていきます。銭湯絵師という職業にかけてみる、彼女の決断は”銭湯絵を残したい”から、”自分には何ができて、自分が何をやりたいか”に少しずつ変わっていきました。

やりたい事があっても躊躇して踏み出せない、
そんな多くの人達へのヒントになるみずきさんの力強さに密着しました。

編集後記

ディレクター:細田謙二(ViViA)

よく行く銭湯に置いてあったフリーペーパーに銭湯絵師・田中みずきさんの紹介が書いてあるのを読んだのがきっかけでした。この銭湯の富士山の絵を描いている専門の職業があるという事、何より日本に3人しかいないという事、そして唯一の若手は彼女だけということ、驚きの連続の中でこの大きな絵をどうやって描くのか、見てみたい!と思いました。

しかし、私が制作の現場で見たのは何よりも大きな絵を時間内で完成させる作業の大変さ。絵を描く場所は“銭湯“というお客さんの場所。浴室を汚さない為の準備や、移動しながら描くための足場の設置、梯子に登っての作業。女性一人では大変な体力勝負の現場と職人絵師の姿でした。そんな制作の現場には銭湯絵師をサポートする旦那さんの姿が常にありました。

絵を描く技術だけではこのペンキの銭湯絵を残せない難しさがあり、その部分を大きく伝えたかったのと、何より肉眼で見る絵の迫力と美しさをいかにテレビを通して伝えられるか、撮影方法も工夫しました。お伺いした富士山のペンキ絵が描かれた個人宅の家では「うちの子にとっては銭湯で見るものよりこっちが本物なんです」と仰っていました。1歳のお子さんの目に触れることで、銭湯がずっと存在するかは分かりませんが、ペンキの銭湯絵という文化は末永く未来に残っていくんだろうと感慨深かったです。

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