#141 畳のゆくえ ~1/4の可能性~

2018年8月4(土)(テレビ朝日 放送) 山形放送制作 協力/文部科学省 総務省 独立行政法人 中小企業基盤整備機構

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山形県寒河江市にある鏡畳店、5人の従業員を束ねるのが4代目の鏡芳昭さん46歳。
彼のこだわりは、畳表をお客さんに直接触ってもらい選んでもらうこと。市場に溢れる畳表の約8割が中国産といわれる畳業界で、鏡さんが扱うほとんどが国産の畳表。そんな彼は「畳は農産物」だと語ります。

そう思うようになったのは、熊本県八代市での出会いがきっかけでした。八代市は国産い草の98%を生産する場所。2006年、鏡さんは初めてい草農家の声を聞きます。「野菜なら直接買うから声が聞こえるけど、い草で消費者の声は聞かない」と生産者は話します。鏡さんは、い草が育つ環境や畳表を織る苦労を知ると、畳屋グループ「畳屋道場」を結成。畳屋とい草農家が手を取り、消費者に国産畳の魅力を発信しています。

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とはいえ、畳を取り巻く状況は厳しさを増すばかり。暮らしの欧米化により、減少する畳の需要。い草農家は高齢化が進み、後継者不足に陥っています。「い草農業がだめになると、日本の畳文化も終わる」そう直感した鏡さんは、現代の暮らしに合う、新しい畳の形を模索し始めます。2013年に開発した「いぐさロール」は廃棄される丈の短いい草を束ねて製作。従来の畳とは違う丸い畳は高い評価を受けました。

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そして今年、鏡さんは新しい畳の開発に着手します。その名も「TATAMI1/4」文字通り1帖の4分の1サイズで作った畳です。フローリングの床などに置いて使う畳で、子どものおしめ交換に丁度いい大きさです。これまでの畳と入れ替えることも出来るので、雰囲気の違う畳の空間を作る事も可能です。
デザインを手がけた大治将典さんは「畳を再発明するアイデア」だと話します。住まいの一部分として固定化されてきた畳が、新しい敷物として絨毯やラグと競合していけるのか。
「TATAMI1/4」が担う、畳の未来と可能性を見つめます。

編集後記

ディレクター:岡田 暁(プライド・トゥ)

夏の暑さのせいか、畳の引力なのか・・・

編集後の夜はアパートで横になり、畳の上でゴロゴロするのが最近の私の日課です。汗ばんだ背中の熱が冷めていくのが心地よく、いつかの夏の記憶がよみがえるような懐かしさを覚えます。
畳替えの取材をしていた時、世代によって畳の印象がこんなに全く違うものかと驚きました。
畳が贅沢品だった世代のお婆さん。60代の男性は新しい畳の香りで、学生時代を思い出したと話してくれました。この夏、熊本から初孫を見せに帰ってくる息子のために、畳替えを注文したご主人…40歳の私にとって畳は家に当たり前にあったものです。では畳が当たり前にない世代にどう伝えればいいのかと悩みました。

番組冒頭、主人公の鏡さんが「畳は農産物」だと話します。そして畳表の原料である、い草の産地、熊本県八代市を訪ねます。国産畳表の98%を生産する八代市で、鏡さんはい草農家と出会い、畳屋として在り方を模索していきます。私は取材を通して「畳は農業を土台にしたものづくり」だと感じました。八代でい草を育てる生産者、日本各地で畳を作る職人、畳を選ぶ消費者。綻びかけた点と点を再生しながら、日本の畳文化の循環が見えるような商品…その1つの答えが「TATAMI1/4」だと思います。

洋室でも和室でも使える「TATAMI1/4」が畳のゆくえをどう担っていくのか。丈の短いい草なら山形でも作れるか、自分ならどこに何枚敷こう…などと夜な夜な妄想しながら、もう少しこの上でゴロゴロする日々が続きそうです。

番組情報

◆鏡畳店
【電 話】0237-86-5063
【H P】http://www.igusa.net

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