#145 "古い"が新鮮 ~レコード文化を守る女性たち~

2018年9月1(土)(テレビ朝日 放送) 山形放送制作 協力/文部科学省 総務省 独立行政法人 中小企業基盤整備機構

chikara145-2.jpg今や音楽は配信される時代。しかし最近、レコードの人気が再燃してきています。過去5年のレコードの生産数はおよそ4倍に上昇。温かみのあるジャケットや、アナログの深みのある音が人気を呼び、再びレコードを聴く人が増えているのです。

 

そんなレコード文化を支えている会社が山形県にあります。創業78年。レコード針を製造する「株式会社ナガオカ」です。ナガオカの作るレコード針は、昔からレコード好きに親しまれ、「ナガオカ針」と呼ばれています。なんと世界シェアは9割。レコード針は長さ1㎜、直径0.25㎜。針先の0.1㎜がダイヤモンドになっています。精密に研磨して作り上げられるレコード針。そんな世界オンリーワンの技術を守っているのは、工場で働く女性たちと4代目の女性社長です。

 

chikara145-1.jpg研磨の工程を担当するこの道44年の斎藤勝子さん(62)。斎藤さんは0.1㎜しかないダイヤモンドの針先を、手作業で、精密に削り上げる技術を持っています。その作業は一瞬。女性ならでは感性が生み出す、繊細で緻密な作業。創業当時から引き継がれてきた匠の技を、斎藤さんは忠実に守り続けてきました。

 

1990年代、CDの登場により、レコードの生産数は大幅に下落します。それでもナガオカはレコード針の製造を止めませんでした。「世界に何十憶とあるレコードを捨てていいのか…。時代遅れという理由だけで…。」(2代目社長)

 

chikara145-3.jpg4代目に就任したのは、長岡香江社長(45)。9年間、外資系金融会社で働いていた経験があります。持ち前のコミュニケーション力を武器に、レコード文化の普及のため全国を飛び回る日々。「ナガオカブランドをもっと若い人に知ってもらいたい。」
長岡社長は、来客者を必ず会社のオーディオルームに案内します。「ナガオカの針で聴くとライブで感じるような、音圧というか振動が伝わるというか、そこにオーディオの奥深さがあると思うんですよね。」

 

一旦は衰退という危機を迎えたレコード文化。それでもレコードを愛する人は絶えません。レコード文化を絶やしてはいけない…。レコード文化を守る女性たちの物語です。

編集後記

ディレクター:武田 広幸(プライド・トゥ)

 レコード…?あれどうやって音出てるの?
私は平成4年生まれ。物心ついた頃には、CDがあり、携帯電話があり。音楽は配信される時代になっていました。そんなデジタル世代の私は、レコードって何?から取材が始まりました。

中古屋に走り、レコードとプレイヤーを購入。自宅で試聴しました。
慣れない手つきでレコード盤をジャケットから出し、ターンテーブルにセット。溝の切れ目を見て曲の始まりを探し、そっと針を落とす。この一連の動きが私にとって新鮮で、曲を聴くまでのワクワク感と音が聴こえた瞬間の高揚感を演出しました。

レコード針を製造する女性たちは、お昼休憩と15時の10分休憩以外は黙々と作業に取り組みます。作業時間はずっと顕微鏡を覗きっぱなしです。私には過酷に思えてしまう作業ですが、女性たちは苦にせず、針先に思いを込めます。
世界シェア9割を誇るナガオカ針。ナガオカが無くなればレコード針が無くなる。そんな責任感から、長岡社長もレコード針の製造に関わった時期があるそうです。音へのこだわりと職人さんの技術を理解しているからこそ、自信をもってナガオカの製品を薦めるのだと思います。

アナログ世代には懐かしい、デジタル世代には新鮮なレコード。取材後、すっかりレコードにハマった私の部屋にはレコードの棚ができました。
番組を見た方にとって、レコードに触れるきっかけとなれば嬉しく思います。

番組情報

◆株式会社ナガオカ
【住 所】山形県東根市大字蟹沢1863-6
【電 話】0237-42-1135
【H P】https://nagaoka.co.jp/

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