#146 ジビエの極意 ~マルチハンター片桐邦雄の世界~

2018年9月8(土)(テレビ朝日 放送) 静岡放送制作 協力/文部科学省 総務省 独立行政法人 中小企業基盤整備機構

片桐邦雄
ジビエとは野ウサギ、シカ、イノシシなど狩猟で捕獲された食肉。狩猟の盛んなヨーロッパではジビエ料理が食文化として育まれたが、最近日本でもブームだ。

そんなブームとは一線を画すジビエ料理人が割烹「竹染(ちくせん)」(静岡県浜松市天竜区)の主人・片桐邦雄(67)。ジビエ料理を看板に掲げ45年。供される料理は猪鍋や鹿肉など、取り立てて凝った料理ではないが、素材そのものの良さが評判
で全国各地から客が訪れる。

料理に使う食材のほとんどは、片桐が自ら調達する。春夏は天竜川に船を出し、アユ・ナマズ・うなぎを、秋冬は野山を巡り、鹿やイノシシを追いかける。しかも生きたまま捕獲するのが信条だ。狩猟と聞くと鉄砲で殺傷するイメージが強いが、片桐は「罠師」と呼ばれる罠専門の猟師だ。自分で作った罠を仕掛け、素手で生け捕る。とりわけイノシシとの格闘は命がけだ。そして、捕獲から解体、調理まですべての工程を自ら行う。
「自然の命を頂く限りは、最も美味しい食材にしないと申し訳ない」が片桐の心情だ。

罠猟1
11月~3月中旬までの狩猟期間、片桐は朝早くから静岡県天竜地区の野山を100㎞近く巡る。シカやイノシシの気配を落ち葉や泥の痕跡から探り、「ウツ」と呼ぶ獣道に罠を仕掛け、ひたすら野生のけものと対決する毎日だ。45年に及ぶ罠師の経験は片桐に研ぎ澄まされた感性とストイックな生活を与えた。片桐は落ち葉一枚の形状で、動物の通り道や種類を見分ける。イノシシは成獣になると80㎏以上に及び、捕獲はまさに命がけだ。。罠猟2
それでも猪の走力や踏ん張りをなくさせ、イノシシの視界をテープでふさぎ、生きたまま捕獲する。銃を使わず罠猟で生け捕りにするのも、捕えた獲物に目隠しして恐怖心を和らげるのも、すべては大事な命をより良い状態で頂くためだ。

獲物の解体は片桐が「罠師」から「料理人」に替わる時。鑓の一突きで、獲物をストレスなく食材に変えていく。獣の肉は命を絶たれた瞬間から酸化が始まり腐敗の道を辿るという。素早く血抜きをし、全
ての部位を処理し「余すことなく美味しく食すること」
こそが、獲物への最大の感謝だと信じている。

猪鍋
片桐の料理はシンプルだ。例えばシシ鍋の味付けは塩のみ。生臭さがなく、味噌などは使わない。「野生の命に感謝を込めて、シンプルに頂く」
片桐の自然への敬意と鮮やかな技、ジビエ料理の極意に迫る。

編集後記

ディレクター:柏木 秀晃(静岡放送)

子どもの頃に親や先生から聞かせれた「いただきます」の意味。命をいただくことや食事を作ってくれた人への感謝が、そこには込められていると教わった。しかし今は、意味を考えることなく挨拶感覚で「いただきます」を使っている人も多いはず。

実際に私自身も主人公の片桐さんに出会うまではその一人だった。一人で捕獲・解体・調理をする片桐さんを取材すると、普段では決して見ることのできないシーンばかりだ。そして「命」とは・・・と考えてしまう。当たり前の事だが私たちは、動物や食物の「命」を頂き生きている。今回の番組を作ってからは、食事前の「いただきます」を発しながらまず、その意味をかみしめている。

番組情報

◆寿司割烹 竹染 (チクセン)
【住 所】静岡県浜松市天竜区二俣町二俣2177
【電 話】053-926-2572
【H P】https://www.chikusen-katagiri.com/
※メニュー:<予約限定> 天然物おまかせコース・・・7,000円(税込)~ 等

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