
観光業では躍進を続けるも、製造業の発展は全国的にも立ち遅れている沖縄。そんな中、製造業で躍進を続ける楽器メーカーがあります。オーボエなどの木管楽器を専門で作る『美ら音工房ヨーゼフ』です。かつてプロのオーボエ奏者だった仲村幸夫さん(64)が工房を立ち上げて11年。今や世界25カ国と取引し、年間400本以上のオーボエを製造しています。

しかし驚くべきは工房の人員構成。ヨーゼフに勤める、26人の従業員の中には、音楽経験が少ない方たちがちらほら。工房では公民館で『無料コンサート』を開催するなど、楽器作りだけでなく、音楽を楽しむ土壌作りも行っています。
そんな工房を指揮する仲村社長の最終目標は、”楽器作り”を沖縄の産業にすること。オーボエが世界的に認められた今、開発・販売共に力を入れているのがクラリネット。
その市場はオーボエの10倍ともいわれており、”楽器作り”を沖縄の産業として成長させるには欠かせないマーケットです。ヨーゼフのクラリネットを世界に売り込む次のステップは、ベルギーで開催される『国際クラリネットフェスティバル』。はたして、海外での反応は?
沖縄を”楽器の島”にしようと奮闘する、職人たちの挑戦を追いかけました。
編集後記
ディレクター:今井憲和(琉球放送)
本編の主人公、仲村社長は相当グルメな方だった。というのも、取材中ご一緒させていただいたお店が、どこも最高に美味しいのだ。沖縄料理はもちろん、イタリアンに和食、チベット料理の店まで。途中からは取材と同じぐらい、社長のグルメの引き出しを見せて頂くのが楽しみになった。
ある日のロケ、タイ料理に誘って頂いた際に社長がひと言。「すごいよなぁ、料理人は。いつお客さんが来るかもわからないのに、毎日手を抜かず、仕込みをして待っているんだからさ」。社長曰く、作り手の“情熱”が感じられる料理を前にすると、“この料理に恥じない楽器を作ろう”と、やる気を掻き立てられるのだという。常に演奏者の立場に立ち、かゆいところに手が届くような、細かな改良を続けるヨーゼフの楽器作り。そのブレーンである社長の“情熱”を支えていた一つが、料理人が丹精込めて作る料理だった。
イイ話だなぁと頷きながら、トムヤムクンをすすった。社長の話を聞いた後のスープは一層美味しく感じられる。と、社長が更にひと言。「まぁ、あなたもこの料理に恥じない番組、作って下さいよ」。完全な不意打ちだった。ジワジワとした辛さの前に、ものすごいプレッシャーがこみ上げてきた。