#177 笑顔の村 ~昔話の世界に生きる~

2019年6月22日(土)(テレビ朝日 放送) ABCテレビ制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ


和歌山県・那智勝浦町、色川地区は、世界遺産・那智の滝の西側に位置する山あいの小さな田舎町です。人口は320人ほど。そのうちの半数以上が移住者です。移住者たちは塩づくりや医者など、それぞれ地域に根ざした仕事をしています。

「中途半端な田舎じゃないぜっていう、昔話のような暮らし」。そう話す横浜市出身の外山麻子さん(36)は、12年前、色川に移り住んできました。夫・哲也さん(61)とは色川で出会い、結婚。のどかちゃん(6)、快くん(4)の2人の子どもとともに、自給自足に近い生活を送っています。自宅のすぐそばでニワトリや牛を飼い、畑では野菜を栽培。水は川から引き、薪ストーブで火をおこす、昔話のような暮らしです。美しい棚田の広がる集落で日々を送る一家の日常には笑顔が絶えません。


そんな色川地区では移住者の受け入れに力を入れていて、地域では会議が定期的に開かれ、集落ごとに空き家情報を共有するなどしています。会議をまとめるのは、色川生まれの色川育ち、新宅伸一さん(70)。実は色川には、かつて人口減少によって集落が失われてしまった過去がありました。新宅さんは移住してくる人たちの力も借りて、これからの色川を守っていきたいと話します。


色川にやってきた人たち、色川に生まれ育った人たち。そして新たに色川で育つ人たち。みんなの笑顔がつくる、きょうの色川。そんな色川の日常を美しい景色とともにお届けします。

編集後記

ディレクター:西一樹(ABCテレビ)

とにかく、自然の美しさに驚きました。色川地区では、農薬を使っていない農家が多く、田んぼには昔から当たり前のようにいた、イモリ、水生昆虫、オタマジャクシに、ヘビもいて、40~50年前には大阪市に近い場所でも同じ様な光景が見られたと思うと、今は本当に豊かになったのかどうかと考えてしまいます。番組では、生き物や自然の風景を丁寧に取材しました。
子供がとても人懐っこいことにも驚きました。色川では、子供を友達同士で預け合ったり、地域全体が面倒を見ています。取材では、キラキラした子どもたちの表情をありのまま表現するように努めました。取材する人たちを自然な成り行きの中で撮影し、撮影のために待って頂くことなどがないように気をつけました。自然な流れを重視しました。
番組を通して、子育てについて、仕事について、お金について、豊かさについて、少し立ち止まって考えるきっかけになれば幸いです。取材させていただいた外山麻子さんの言葉が印象に残っています。「東京大学に入るために長年頑張ってきた勉強よりも、色川地区にきて、地元のおばあちゃんから教わった3年間が人生で一番勉強になりました。」

田村信大(ABCテレビ)

父・哲也さんは薪割り、母・麻子さんはかまどで料理。のどかちゃん、快くんの姉弟は家の前で川遊び。牛がモーと鳴けば、棚田からはケンケンとキジの鳴き声。まさに「むかーしむかし…」の世界がそこには広がっていました。取材した外山さん一家の日常です。
色川地区を初めて訪れたのは2月末。それから満開の桜、新緑輝く山と、訪れるたびに姿を変える美しい風景に迎えられました。
取材を通して印象に残っているのは、この色川の地でのびのび育つ子どもたちの姿です。一家そろって食卓を囲み、子どもたちが食べるのは家で作られた野菜やお米。遊ぶときはよちよち歩きの子から小学生までみんな一緒。豊かな自然を遊び場に、木登りしたり、川遊びしたり。その様子をお父さんお母さん、時にはおじいちゃんおばあちゃんが交代しながら見守っています。地元の人、移住者の分け隔てなく子供たちに愛情を注ぐ姿に、「地域で育てる」とはまさにこのことだと思いました。都会ではいまやほとんど見られなくなってしまった光景です。
色川に育つのどかちゃん、快くんが、これからどんな大人になっていくのか楽しみです。

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