
山形県酒田市にある製本会社のウェルボン。
次々と新しい本が作られている一方で、なぜか事務所には〝壊れかけた本〟が積まれています。
表紙がボロボロ。ページが破れて落書きだらけ。背の部分が壊れてまともに開閉できないものなど、様々な症状を抱えた本が全国各地から届いています。
実は社長を務める齋藤英世さん(65)は、10年前から”ブックスドクター”と名乗り、製本業の傍ら〝本の治療〟を行っています。

「本には持ち主の愛着や思い出が宿っている。本の修復をする事でそれらをよみがえらせたい。」
齋藤さんの元には、一見諦めざるを得ないような本が連日のように届きます。
■表紙がボロボロになった本
「70年以上大切にしているおじいちゃんの愛読書を直してほしい」祖父を喜ばせたい孫から依頼です。
■背が欠落して当時の面影を失った本

「若かりし頃の父の姿が載っているので、父の形見として残したい」亡き父を偲ぶきょうだいからの依頼です。
■落書きだらけの絵本
「40年前、母から買ってもらった絵本を自分の子供にも読ませてあげたい」本を大切にする父親からの依頼です。
齋藤さんは、本に一体どんな〝治療〟を施すのか…。持ち主の思い出をつなぎとめるブックスドクターの診冊記です。
編集後記
ディレクター:沼沢 諭(プライド・トゥ)
私は本を読みません。忙しいのを言い訳にほとんど…
最近、片時もスマホを手放せなくなった三十代です。
そんな私ですが、今回の取材を機に久しぶりに自宅の本棚を物色しました。出てきたのは、学生時代に読んだ小説。どんな内容だっけ?と、本を手に取りページをパラパラめくります。すると、真っ先に思い出したのは、物語の内容よりも本に夢中になっていた頃の記憶でした。本を購入した近所の書店や、友人と物語の推測で盛り上がった事。20年前の記憶が、鮮明に蘇ってきました。
本は、単なる媒体ではなく〝モノ〟として見た時、記憶を留めやすい不思議な〝チカラ〟を秘めている気がします。
ブックスドクターが言っていました。
「本には〝持ち主の足跡〟が残っている」
とある母親が言っていました。
「本には〝温かみ〟がある」
会社の上司が言っていました。
「番組編集の基本は、絵本や紙芝居だぞ!」と。(笑)
願わくは、番組に〝本のような温かみ〟が滲み出ていますように。