#255 北の離島は人生のリング ~移住漁師・感涙の6年間~

2021年05月01日(土)(テレビ朝日 放送) 北海道放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

「利尻昆布」で名高い北海道、利尻島(りしりとう)。この島で今、都会生まれの移住漁師が奮闘しています。神戸出身の水貝和広さん(39)は元プロボクサー。「漁業研修制度があるから来い」…中学時代からの友人、中辻清貴さん(40)に誘われて漁師になることを決意してやって来ました。研修2年目の2015年、「日本のチカラ」は、水貝さんを密着取材しています。当時はまだ勝手がわからず船の上を右往左往…。親方に叱られることもありました。「一人になりたい」と島の温泉に浸かりに行ったことも…。あれから5年を経た去年夏、水貝さんは見違えるほど漁の腕を上げていました。そしてもう一つ…大きな変化が…。

水貝さんの友人で先輩漁師でもある中辻清貴さんは、かつては水産会社のサラリーマン。昆布の買い付けで島を訪れた際、中辻さんは横山利彦さんと出会います。横山さんには後継者がいませんでした。「せっかく利尻昆布という産業があるのにもったいない」と、中辻さんは横山さんに弟子入り。昆布漁のイロハを学んでいきます。親方の口癖は「漁師は頭を使え!」。その教えを中辻さんは実践してきました。2015年に取材した際、中辻さんはカモメのフンに悩まされていました…「高級昆布が最後の最後で台無しになってしまう」。その対策として、干し場の上にカモメよけの凧をあげ、大切な商品を守りました。

そして去年、島で一番大きな乾燥施設を建設します。そこには様々な工夫が…。しかし、親方の横山さんがこの施設の完成を見ることはありませんでした。「必要なことは全部教えた、って言ってくれたんです」…そう話す中辻さんの目には、光るものがありました。

都会から来た移住漁師の6年間を見つめます。

編集後記

ディレクター:河野啓(北海道放送)

画になる島の画になる人たちの物語です。

6年前に「日本のチカラ」で取材した際、漁業研修生だった水貝和広さん(39)は、まだ漁の勝手がわからず親方に叱られることもありました。未明から沖で昆布を引き上げ、舟を下りれば救命胴衣を脱ぐ間もなく昆布干しに加わります。「プロボクサーだったころより走ります」と苦笑していました。実直な仕事ぶりを見ていると、私の頭の中にビリージョエルの名曲「オネスティ」が流れてきました(番組の中でもかけました)。

「これからどう変わっていくかな?」漠然とそんな思いを抱きましたが、また番組に描けることになろうとは想像もしていませんでした。去年再会した水貝さんは、漁の腕前を上げたばかりか、2人のパパになっていました。

水貝さんを漁師の道に誘った同じ神戸出身の中辻清貴さん(40)も、大きく成長していました。「雨の日でも昆布を乾かせるように」と、おととし島で1番大きな乾燥施設を建設。そこには様々な工夫が凝らしてありました。「漁師は頭を使え!」…親方・横山利彦さんの教えを中辻さんはずっと実践してきました。横山さんはおととし他界しましたが、その教えと昆布漁の伝統は、都会から来た弟子にしっかりと受け継がれていました。

歳月が人を動かす…「時間」がドキュメンタリーを演出することを、改めて実感した取材でした。

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