#258 駆け出しは30歳 〜炎でつくりたい〜

2021年05月22日(土)(テレビ朝日 放送) 山口放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

山口県岩国市の山間にある、小さな陶芸の窯。地元出身の田村悟朗さんが開いた「通化寺窯」です。79歳の田村さんは体力に限界を感じ、おととし作陶を引退。そして去年、窯の後継者になりたいと、ひとりの若者がやってきました。伊神雄一さん、30歳です。

愛知県名古屋市出身の伊神さん。日本に古くからあるものが好きで、地元では刃物の研ぎ師をしていました。しかし「何か形に残る仕事がしたい」と器をつくる職人になることを決意、
故郷を離れてやってきました。

 通化寺窯にあるのは「登り窯」と「穴窯」。いずれも、薪で焼く窯です。ガス窯や電気窯などの近代的な窯が主流となるなか、田村さんは薪の炎で器を焼くことにこだわり続けました。特に、日本で最も古い形式とされる「穴窯」は、一度に焼ける作品の数が少ないうえ、焼成に必要な時間が長く、大量に薪を消費します。経済性では他の窯に遠く及ばず、時代とともに姿を消していった窯…しかし田村さんは、この穴窯でしかなしえない自然由来の器を作り続けました。伊神さんも、その昔ながらの手法に惹かれ、全国に数ある窯元の中で、通化寺窯を選んだのです。

固定給はなく、作品が売れないと生活ができない、職人の世界…伊神さんは、貯金を切り崩しながら、ひたむきに薪を割り、土をこねていきます。師匠と弟子、ふたりで挑戦した最初の窯焚きの結果は…。

山間の小さな窯で受け継がれゆく、炎を記録しました。

 

編集後記

ディレクター:大坪 敬幸(山口放送)

背中の真ん中まで届くロングヘアー。無精髭。ちょっと怪しい人・・・?いいえ、話すとすぐ、その温かくて優しい人柄に引き込まれます。伊神雄一さんです。去年、故郷から遠く離れた山口県岩国市にやってきました。山間にある小さな陶芸の窯に弟子入りし、この道50年の師匠・田村悟朗さんから、陶芸を学んでいます。

私が窯に最初に訪れたのは、伊神さんがやってくる前でした。「後継者を探している窯元がある」と耳にし、田村さんを訪ねたのです。普段使っている器のことなど気にも留めず、陶芸について全くの無知だった私でしたが、田村さんも、弟子の伊神さんも、いつ窯にお邪魔しても温かく受け入れてくださいます。その人柄に惹かれ、窯に通い続けて1年半。伊神さんの最初の作品づくりを中心に番組にしました。

伊神さんは30歳・・・新たな分野で「職人」となるには、少し遅いのかもしれません。しかし、師匠の田村さんが前職の教師から陶芸の世界に飛び込んだのも、30歳のときだったのです。師匠の言葉に耳を澄ませ、土と、炎と向き合う伊神さん。静かに見守る田村さん。山間の小さな窯で、ふたりがこれからどのような世界を見せてくれるのか・・・これからも記録しつづけたいと思っています。

「窯の炎を絶やしたくない」・・・田村さんの願いを、伊神さんが叶えます。

番組情報

アートの郷 陶芸 薪窯研究所(通化寺窯)
【電話】0827-84-2010

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