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山口県周防大島(すおうおおしま)で生まれ育った野口のあさん(21)は、2021年8月、ハワイ・カウアイ島へと渡りました。明治時代、周防大島からは大勢の移民がハワイへと渡り、島同士は今も交流を続けています。
保育園の時、フラに夢中になったのあさんのために、かつて町役場でハワイとの交流事業に携わっていた祖父は小さなフラチームを結成、母や弟もチームに加わり、練習を続けてきました。フラの振り付けには厳格な決まりがあり、腕と指先の動きで歌詞の内容を表現します。かつて文字を持たなかったハワイの人たちにとって、フラは、自然や神々への祈りであると同時に、後世に神話や歴史を伝える大切な表現方法だったのです。
本物のフラを踊るために、のあさんはハワイの歴史を、文化を、空気を、肌で感じたいと考えはじめます。今、ハワイ・カウアイ島で暮らすのあさん。山口県にルーツを持つホストファミリーが作ってくれる家庭の味も、日系人として戦地に赴いたおじいちゃんの話も、島で指折りの踊り手の先生が教えてくれるフラのスピリットも、ハワイの空の下で、いろんなものを吸収しています。
幼かったころ、目の前の人が笑顔になってくれることが嬉しくて、踊り続けました。いま、自分がフラを踊る意味と責任を考え始めています。ふるさとの島と、移民の子孫たちが暮らすハワイの島と、お互いの島の人たちが大切に守ってきた結びつきを受け継ぐには何をすべきか…。瀬戸内の島で生まれ育った小さなフラガールは、自分の役割と向き合い始めています。
編集後記
ディレクター:山﨑真哉(山口放送)
“瀬戸内のハワイ”と呼ばれる山口県周防大島の小さな“フラガール”…野口のあさんの取材は、当初、キャッチ-なワードだけに惹かれて始まりました。取材を重ねるうちに、フラを踊る彼女の手の動き、腕の動き、指先の動き一つ一つが「星」、「波」、「雨」、「花」…と、言葉を表現していることを知ります。ぼんやりとしたフラの華やかさだけをとらえていたカメラも徐々に指先を意識したカットが増えていきます。
取材を始めて1年が経ったころ、のあさんがハワイに留学する目標をもっていること、そして、ふるさとの島と、ハワイの懸け橋になりたいという夢を持っていたことを知ります。今年1月、ハワイ・カウアイ島で久しぶりに再会したのあさんに、まだ同じ夢を抱いているのか、ドキドキしながら尋ねてみました。「今も変わっていない」との答えにホッとして、でも、次は、夢を実現するためにはどうすべきか…。最初の移民から130年以上も経過した島同士、飛行機を3度乗り継がないと辿り着けない遠く離れた島同士、それをつなぐ懸け橋になるには…彼女自身もまだ答えが見つからない夢の続きに乗っかって、今後も共に悩みたいと思います。