#354 人形師翔る! 父と子の追い山笠

2023年9月2日(土)05:20~05:50 (テレビ朝日 放送) RKB毎日放送 制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

創業1917年、福岡市で105年続く中村人形。先細りが懸念される業界において、家族の記念日や節句に、と注文が相次ぐ人形師一家…博多人形らしからぬ作風が持ち味です。4代目・弘峰(ひろみね)さんは「江戸時代の人形師が現代にタイムスリップしたら」という発想で、野球選手やレスキュー隊、独特の紋様をあしらった動物など独自性の高い作品で人気を博しています。父で3代目の信喬(しんきょう)さんは、天正遣欧少年使節の作品をローマ教皇に献上するなど世界的に活躍、工芸展で数々の賞を受賞しています。信喬さんは「先代と同じものを作らない、変化することこそが中村人形の伝統だ」と語ります。博多の人形師の最高の名誉は博多祇園(ぎおん)山笠(やまかさ)を作ること。数が限られた「山笠(やまかさ)」ですが、親子それぞれに制作の依頼が…。息子に依頼されたのは、まつりのフィナーレに博多の町をかける「舁(か)き山笠(やま)」。土台から制作するため、力量が問われます。なかでも弘峰さんが作るのは「一番山笠(やま)」と呼ばれる祭りの成功を左右する責任重大な山笠(やま)。

題材は福岡藩初代藩主・黒田長政。福岡の街を率先する、という意味合いを持っています。そして長政の背合わせに父である黒田官兵衛の人形も作ることに。完成した舁(か)き山笠(やま)を、父・信喬さんはどんな思いで見つめるのか…。息子・弘峰さんは、自ら制作した一番山笠(やま)を担ぎ、何を思うのか…。親子でありながら師弟、ライバル、仲間…と多くの関係性を持つ二人の濃厚な絆を通し、100年4代に渡り受け継がれた人形師親子に迫ります。

 

編集後記

ディレクター:谷口あゆみ(RKB毎日放送)

私が中村人形と出会ったのは2019年、ローカル番組の取材がきっかけでした。工房に飾られた人形を初めて見た時、「これは博多人形ですか?」と思わず聞いたことを今でも覚えています。博多人形といえば、祖父の家に飾ってある武士や美人物をイメージしていた私にとって、中村信喬さん、弘峰さんが作る人形は色、形、柄、そのすべてが斬新で、美しく、夢があって・・・・今では、2人が作る博多人形の虜になっています。

その中村親子のもう1つの顔は、博多祇園山笠の人形師。博多の人形師であれば、誰でも制作ができるわけではなく、長年山笠づくりに携わり、技術を習得した人形師だけが作ることができます。「山笠作りは名誉なこと、真摯に一生懸命作る!」という信喬さん。もし息子である弘峰さんが天狗になったら「その鼻をへし折ってやる!」という言葉が印象的でした。

そんな信喬さんの元で山笠作りを学んだ弘峰さん。今年は7年に一度の大役、博多の街を先駆ける「一番山笠」の制作を初めて任されました。題材は戦国武将「黒田長政」。背合わせの「見送り」には父・黒田官兵衛も制作。下絵描きから飾り付けまで、その工程を撮影させていただきましたが、とにかく繊細!丁寧な手仕事には驚くことばかりでした。特に、弘峰さんがこだわったのは長政の「顔」。新素材のシリコンでベースとなる顔を作り、さらにプラモデルの材料で眼球作り。「伝統を守りながらも進化が必要」という、弘峰さんの新しい挑戦から生まれた長政はまさに力強く、勇壮です。その息子の挑戦を見守る信喬さんのまなざしはいつも温かく、時に厳しく・・・親子・ライバル・師弟である2人の絆の強さを感じました。祭りのフィナーレ「追い山笠」で、博多の街を翔る黒田長政と官兵衛の勇壮な姿は何度みてもかっこいいです!

9月はロンドン、12月はニューヨークで展覧会を行う弘峰さん。博多人形が海を渡ります!2人の人形師の活躍に、これからも注目したいです!

番組情報

中村人形

【所在地】福岡県福岡市中央区桜坂
HPhttps://www.nakamura-ningyo.com/

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