#47 加賀百万石のおもてなし~郷土料理・治部煮~

2014年5月11日(日)(テレビ朝日 放送) 北陸放送制作  協力 文部科学省

shokukikou47-2.jpg石川県の郷土料理と言えば、誰もが「治部煮」と答えます。
カモ肉、麩、しいたけ、せりなどの青菜を煮込み、あんをかけた比較的簡単な料理ですが、客人と食べる「おもてなし」の郷土料理とされ、地元の人はあまり食べません。しかし、そこに使われる食材一つ一つを紐解くと加賀百万石の食文化の歴史が見えてきます。

江戸時代から広く親しまれてきた治部煮から石川県に受け継がれる食文化、その「心」を学びます。

shokukikou47-4.jpgまずは主役となる鴨肉。

加賀市片野鴨池は、1993年ラムサール条約に登録された世界的にも貴重な湿地です。この地域に330年にわたって伝わる伝統猟法が「坂網猟」です。
現代にその技を受け継ぐ猟師は、わずか27人。自然との真剣勝負に惹かれ、若い猟師も増えています。
今シーズンデビューした山根大和(まさかず)さん(27歳)の目を通して、その魅力と伝統を受け継ぐ姿を見つめます。

また、坂網猟で捕れる鴨は猟期(11月~2月)内300羽です。貴重な食材はほとんどが地元で消費され、 鴨猟が行われてきた加賀市ならではの食文化も残ります。
料理人の子供の頃の思い出が詰まった逸品をご紹介します。

shokukikou47-3.jpg治部煮に使われる食材として外せないものが、もう一つあります。
「すだれ麩」と呼ばれる金沢独特の「麩」です。

この冬に公開の映画「武士の献立」でも注目を集めた加賀藩の料理人・舟木伝内包早が考案したと言われています。
江戸時代から変わらない製法、一つ一つ丁寧に生地を包んで「すだれ麩」を作り続けている職人の技に学びます。

また、流通の発達した現代では「治部煮」に様々な食材が使われるようになってきています。
shokukikou47-5.jpg世界農業遺産に指定される能登の里海が育む「春ガキ」もその一つです。
旬の食材を取り入れ、治部煮専用の器で客人に提供されることで、「郷土料理」は「おもてなし料理」になります。

「加賀料理」と呼ばれる石川県の食文化、それは加賀百万石の薫りを残す「おもてなし」の食文化です。
地元の人も知っているようで知らない、一椀の「治部煮」から始まる食紀行をお楽しみください。

編集後記

ディレクター:大西 宏和(北陸放送)

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金沢生まれ、金沢育ちの僕ですが、「郷土料理は?」と聞かれると「治部煮」と答え、「普段食べる?」と聞かれると「食べない、外で出されたら食べる」と答えます。立ち位置がとても不思議な料理なのですが、そのルーツや使われる食材は「郷土料理」らしく、石川県の食文化が見えてくる料理なのは間違いありません。
一番の見どころは治部煮の主役、鴨肉の鴨を捕る「坂網猟」。原始的な猟だと思われた方が多いと思います。ラクロスのような網を投げ、飛んでいる鴨を捕る猟ですが、江戸時代から道具も手法もそのまま受け継がれているゆえに?効率が良い猟ではありません。3ヶ月30人位で200羽・・・猟期約100日として全員合わせて1日数羽?ほとんど捕れない・・・もとい撮れない!?とはいえ、貴重な猟場での取材は楽しいものです。猟師たちの本気が伝わる現場でした。ちなみにみなさん猟で生計を立てているわけではありません。貴重な食材、1羽の値段は秘密ですので想像してお楽しみください。
そして「すだれ麩」。食感の表現が極めて難しい食品です。車麩と高野豆腐を足して2で割って、しっとり度を20%上げた感じの食品。とても麩とは思えないゴッツイ生地が絹のような生地に変わり、馴染みのある麩になっていく工程は興味深かったです。そして、生地を切り取り、伸ばし、形作る職人の「手」に注目!ベテランの職人の手は、動きが美しくなめらかで…意外とスベスベでした。
今回、エンディングまで主役となる料理を誰も食べていません。「治部煮」の具体的な味も語られていません。食べた人の感想や表情など無しで、どこまで「治部煮」を美味しそうに、魅力的に感じていただけるかに挑戦してみました。「石川県は魚以外の食材もすごい!」「器にまでこだわる加賀料理ってすごい!」そして、見た人に「石川県に行って治部煮を食べてみたい」と思っていただければ幸いです。ナレーションは金沢出身の女優・田中美里さん。shokukikou_toiawase47-7.jpg
「冬のソナタ」のヒロインが?石川の食をご案内します。
ちなみに「おもてなし料理」としてコースに入ることが多い治部煮ですが、単品でいただける店もたくさんあります。一椀1000円ほどです(ピンキリですが)。
ぜひ「治部煮」を食べに石川県に来まっし。

番組情報

◆加賀市鴨池観察館
【住 所】石川県加賀市片野町子2-1
【電 話】0761-72-2200
※年中無休 渡り鳥シーズンは秋・冬です。

◆兼見御亭
【住 所】石川県金沢市東兼六町2-37
【電 話】076-222-1600
※兼六園すぐそばです。

◆料亭 山ぎし
【住 所】石川県加賀市大聖寺東町2-24
【電 話】0761-73-1177
※「じぶすき」は期間限定です。事前にお問い合わせください。

◆不室屋本店・茶寮不室屋
【住 所】石川県金沢市尾張町2-3-1
【電 話】076-221-1377
※さまざまな麩、麩を使った料理が楽しめます。

◆料亭 大友楼
【住 所】石川県金沢市尾山町2-27
【電 話】076-221-0305
※要予約

◆旬かき養殖直売 木村功商店
【住 所】石川県七尾市中島町瀬嵐ク-70-1
【電 話】0767-66-1037
※要予約

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