#56 幻の蕎麦、野菜  山村を救う

2014年7月27日(日)(テレビ朝日 放送) 静岡放送制作  協力 文部科学省

shokukikou56-2.jpg趣味のそば打ちが高じて、サラリーマンからそば店を開いた静岡市の田形治さんは、全国を歩き最高と言われるそばを食べ歩いていた。意外にもそばの大産地ではない宮崎や福井の山の中に残されていた昔から伝って来た在来種のそばが、香り、複雑な味、食感とも素晴らしいことが分かって来た。
一方、静岡大学の稲垣栄洋教授は静岡県の山あいに残されている野菜や豆イモなど在来作物が個性的で地域の宝物になると研究を始めていた。

shokukikou56-3.jpg二人は南アルプスのふもと静岡市井川で、昔ながらのそばが残されていることを見つけた。お年寄りが一人で守っていたそばを増やすため、地元の協力を得て50年前に途絶えた焼畑農法を復活させることになった。
1年目は火の勢いが弱かったため収穫量が少なく、食べるまでには至らなかった。反省を生かし2年目は豊作を迎える。

一方で稲垣教授の研究していた在来作物も試食会が開かれ多くの市民が味わった。フランス料理のシェフも興味を持つなど新しい食材として注目を集め、井川でも創作料理の料理人の手助けで新しいレシピの開発が進められている。

田形さんは焼畑で育てた井川在来そばの試食会を井川で開くまでこぎつけた。甘く、食感はもちもちで、焼畑の煙を思い出させる香りがする最高のそばができあがった。全国のそばを食べ歩いてきたプロも絶賛するそばになった。

shokukikou56-4.jpg最初は自分の店で出したいとだけ考えていた田形さんは、過疎で苦しむ井川地区がこのそばを使って人を呼べるようになることを願っている。
「在来そばは井川を救う。」田形さんは今そう思っている。

編集後記

ディレクター:鈴木俊夫(静岡放送)

4年ほど前、ある人に日本のトップクラスのそばを食べる会があるから来てほしいと紹介され会ったのが、今回の主人公のそば店主人田形治さんです。「静岡に最高のそばがある。」そう力説していたのですが、私たちにはピンと来ませんでした。稲とお茶畑が多い静岡でそば畑を見たことがなかったからです。放送局に帰り同僚に話した時も「何を言っているの」という反応でした。
田形さんもこの頃はそのそばで「新しい静岡土産」を作ろうというビジネス中心の話をしていました。

「焼畑するから来てください。」と言われ、静岡市の中心街から2時間かかる井川に行って時も、今から何をしようとしているのかわかりませんでした。「在来そば」「焼畑」が何を意味しているのかみんなが理解するまでには時間がかかりました。

田形さんは、掛川市を中心に広がり世界農業遺産になった「茶草場」の発見者稲垣教授と一緒に、「在来野菜、そば」を大切にし、復活させるという運動の中心人物になります。
二人には力強い味方がいました。望月正人さん仁美さん夫妻をはじめとし、焼畑をした地元の人たちです。

望月さん夫妻と一緒に焼畑の準備をしているうちに、田形さんにとっては井川の友人を助けることの方が大切になったんだと思います。焼畑そばの復活は目的ではなくて、人口が減り続ける井川地区を助ける大切な道具になったんだと思います。
今年在来野菜を育てたいと若いカップルが移住して来ました。井川地区に灯った未来の光です。

地元の放送局として田形さんを、稲垣教授を若い二人を応援していくことで、井川のみなさんの力になりたいと思っています。

番組情報

◆手打ち蕎麦 たがた
【住 所】静岡市葵区常盤町2丁目6-7
【電 話】054-250-8555

◆南アルプス井川観光会館(在来野菜の料理)
【住 所】静岡市葵区井川964
【電 話】054-260-2377

◆あんばざぁ~倶楽部(井川焼畑在来そば試食会 そば打ち教室:月1度)
【電 話】054-260-2912

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