編集後記
					ディレクター:田村康夫(山口放送)
「オトナの一生懸命を見せたい!」
リーダーのいっしい(石田雄一さん・34歳)が、よく口にする言葉です。
かつて男子シンクロブームを巻き起こした青春映画の主人公は高校生でしたが、ABUウォーターボーイズのメンバーは、ほとんどが20~30代の社会人。立派な“オトナ”たちです。それなりに“脂ののった”“分別ある”オトナの良さは発揮できるものの、かえってそれがブレーキをかけてしまったり、さまざまな周囲の目が気になったり…と、目に見えたり見えなかったりするいろんな壁と密かに戦いながらの活動。若い若いとは言いながら、練習を頑張りすぎると足がつるし、息もあがります。
練習は公演3か月前から、週3回仕事終わりに。ときには土日も夕方から集います。高校生の部活のように、毎回フルメンバーが集まれるわけではありません。この夏、あるメンバーは、仕事多忙のため、10回にも満たない練習だけで本番を迎えました。(自宅での自主練習はさぞ大変だったと思います。)仕事で1か月近く山口を離れたメンバーもいました。療養で思うように参加できないメンバーもいました。メンバーが揃わなければ、コンビネーションにしてもフォーメーションにしても、確認できないことばかり。焦るマネージャーが、練習後の反省会で“キレる”のも致し方ありません。
…それでも彼らは、それぞれができる限りの「一生懸命」を尽くすのです。彼らと同じ30代の私は、いつも彼らと自分とを比べながら取材の現場に立ち会い続けました。自分は“一生懸命”何かができているだろうか、と。ABUウォーターボーイズは、毎公演、お客さん一人一人にも同じように問いかけているのかもしれません。
ひとりでも多くの人に、彼らの努力の結晶が、一生懸命が、届いてほしいと願っています。