
「うわぁ!」「なにこれ!」高知県室戸市に去年オープンした「むろと廃校水族館」。毎日子どもたちの元気な声が響きます。2006年に廃校になった椎名小学校を改修し、開館1年で、20万人が詰めかける観光スポットになりました。水槽の魚は、すべて地元の漁師が無償で提供したものです。
椎名小の卒業生、安岡幸男さん(79歳)も水族館に魚を届ける漁師のひとりです。

失敗して人にバカにされても、最初の一歩を踏み出さないと何も始まらないというのが信念の安岡さん。 「バカがおらんと始まらんよ」と、残された人生を集落のために尽くすことを生きがいにしています。
地元の顔役でもある安岡さんは地域イベントにも積極的に参加します。廃校水族館が企画したクリスマスイベントでは、サンタクロースを担当。漁船の上から手を振るサンタクロース姿の安岡さん。

ずっと集落に住み続けてほしいとの思いを込めて子どもたちにプレゼントを渡します。安岡さんの姿を見て地元の漁師たちも立ち上がります。廃校水族館と一緒に大がかりなイベントを開催。集落再生への思いを強くします。
移住者を増やして集落の再生を願う安岡さんと漁師たち。ついに、その思いが実るときがきます。この春、廃校水族館に研修に来ていた大学生が、集落での触れ合いをきっかけに移住して漁師になることを決意。安岡さんは、漁師の面接に同席し見守ります。果たして面接の結果は…。おじいちゃん漁師と廃校水族館の日々を見つめます。
編集後記
ディレクター:田中智盛(高知放送)
「バカがおらんと始まらんよ」。取材中、安岡さんから何度も聞いた言葉です。失敗してバカにされてもいいから、はじめの一歩を踏み出す。その結果を踏まえて議論した方が、物事は前に進む という意味が込められています。10代の頃から漁師一筋だった安岡さん。マグロ漁船に乗って南アフリカやオーストラリアなど世界の漁場を巡りました。長い時は1年以上も漁に出かけ、船員同士のいざこざも多かったそうです。いろいろな国の漁港に寄っては、見分を広めましたが、一方で、現地の人から差別を受けたりと苦労も経験しました。そうした人生の経験が、いつも相手の立場にたち、相手のことを思いやる礎になっているそうです。「80歳になるまでは、何でもやって人の役に立ちたい」と言っていた安岡さん。でも、来年80歳を迎えるにあたり、最近気持ちが変わったそうで、「これからも頑張るかもしれんね。ジャマにならん程度にね」と笑いながら話してくれました。
番組をご覧になった方が元気なおじいちゃん漁師の姿を通して、一歩を踏む出す大切さを感じてもらえれば幸いです。