#242 ヒメタツに魅せられて ~再生へ向かう 誇りの海~

2020年11月28日(土)(テレビ朝日 放送) 熊本放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

熊本県南部に位置する水俣市。この町に広がる「不知火海」はかつて公害により生態系を破壊された悲しい歴史を持つ。昭和20年~30年代にかけ、水俣市の化学工場から「水俣病」の原因となる大量の汚染物質が海に流された結果、大量の生き物たちが処分された。それから約70年。今、水俣の海は全国のダイバーたちが集まる注目のスポットになっている。

きっかけを作ったのは水俣市在住のダイバー 森下 誠さん(50)。森下さんは故郷水俣の海に毎日潜り、海中の様子をカメラで撮影し続けている。写真には、海藻の森やサンゴ、そこで暮らすたくさんの生き物たちの姿など、再生へと向かう水俣の海の今が映し出されている。

水俣の海が持つ「マイナスのイメージ」を払拭したいと考えた森下さんは2009年、水俣市初のダイビングショップ「SEA HORSE」を立ち上げた。SEA HORSEには、全国から客が訪れ、中には何度も訪れるリピーターも。一番のお目当ては水俣の海に暮らす“ある珍しい生き物”を見るためだ。

その生き物とは2017年に国内で116年ぶりに確認された新種のタツノオトシゴ「ヒメタツ」。海藻やサンゴが生い茂る豊かで穏やかな海にしか住めない珍しい生き物だ。ダイバーたちは春から夏に迎えるヒメタツの繁殖シーズンになると神秘的な、生命誕生の瞬間を見ることができる。また、ヒメタツの発見には“さかな”で有名なあの人物が関わっていた。

かつて、”死の海”とまで呼ばれた水俣の海で繰り広げられる生命の営みと故郷水俣の今を伝え続ける森下さんの思い。美しい海中の映像と共にお楽しみください。

編集後記

ディレクター:中村 壮太郎(RKKメディアプランニング)

森下さんから初めて「ヒメタツ」の繁殖シーンの映像を見せていただいた際、とても感動したのと同時に、水俣でこんな風景が見ることができるのか、と何だか誇らしく思ったことを覚えています。このシーンを見ていただきたい、というのが今回の企画の発端でした。

しかし、取材を進めていく上でヒメタツ以上に心を動かされたのが、森下さんの故郷水俣に対する思いです。番組内で紹介した通り、森下さんは水俣の海にほぼ「毎日」潜っています。しかもお客さんが来る、来ないに関わらず―。毎日潜ってヒメタツを観察するうちに、この個体はあと何日で出産を迎えるか・・・といった情報が正確に分かってくるようになったそうです。そのおかげもあって森下さんの案内の下潜るお客さんは、ヒメタツの繁殖シーンに高い確率で出会うことができます。水俣の海のイメージを変えるため、毎日海に潜る森下さんの姿はヒメタツ以上に水俣の救世主なのかもしれない、と取材を通して感じました。

そして森下さんの故郷への思いはたくさんの人を巻き込んでいきます。子どもから大人まで大人気の「さかなクン」もその一人。今回森下さんを主人公にした番組を作っていることをお伝えしたところ、快くインタビューを受けてくださいました。

一人のダイバーと小さな生き物が紡ぐ再生へと向かう海の物語。番組では森下さんからご提供いただいた海中の映像をたくさん盛り込みました。少しでも心の癒しになれば、また水俣の海に対するイメージにプラスになれば幸いです。

番組情報

水俣ダイビングサービス SEA HORSE
【住所】熊本県水俣市牧ノ内11−11
【電話】0966-83-5678

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