#272 山のガッコウ ~三重県発“教えない教育”~

2021年08月28日(土)(テレビ朝日 放送) メ~テレ制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

三重県桑名市の山のふもとにある子どもアイデア楽工(ガッコウ)。廃校となった小学校の建物を再活用した小学生対象の私塾で、週末や長期休暇に開校します。代表は、山上敏樹(やまがみとしき)さん、63歳。みんなからは「コウチョウ」と呼ばれています。

ここはモノづくりと遊びのガッコウ。工作の時間には、牛乳パックや割りばし、輪ゴムなどを使って弓矢や動くおもちゃなどを作っていきますが、授業中には「教えない教育」を実践しています。子どもたちは、目の前にある出来上がった見本を観察して、それをもとに自分で考えて作ります。先生は、失敗しそうな時にだけヒントを出しますが、作り方を細かく教えることはありません。「教えないことで、子どもたちは創意工夫をするようになる」と山上さんは言います。

京都に生まれた山上さん。小さい頃からものづくりが大好きで、東京の美術大学では造形を学びました。卒業後は、鈴鹿サーキットの運営会社に就職、アトラクションの開発に携わりながら、子どもたちの生活習慣や考え方の研究も。その時「今の子どもたちは、指示ばかり仰いでいる」ことに愕然し、会社を早期退職。自分が目指す教育を実践しようと2013年、子どもアイデア楽工を設立しました。

しかし昨年からのコロナ禍で参加する子どもたちが減り、ガッコウ運営も大変なことに。そこで山上さんは、かつて自分の両親が住んでいたマンションの一室を改装して、オンラインスタジオを開設。幼稚園の遠隔授業を始めました。そのスタジオで新たな出会いが…。SNSを通じて知り合った北海道の少年、りゅうせい君(小4)と画面越しに会話をするように。実はりゅうせい君、小学校で自分の描いた絵が「気持ち悪い」と同級生に言われ、それがきっかけでいじめにあい、すっかり心を閉ざしていました。山上さんは画面越しに、りゅうせい君の描いた絵の素晴らしさを評価し褒めてあげると、りゅうせい君は少しずつ心を開くように。その姿に感銘したりゅうせい君のお母さんは、三重県の子どもアイデア楽工までりゅうせい君と妹を連れて出かけることを決意。実際に体験入学するとりゅうせい君は、様々なカリキュラムに参加するごとに笑顔を取り戻し元気になっていきました。その姿を見たお母さんは感涙。
多くの子供たちの心を育む、子どもアイデア楽工の活動を追いかけました。

編集後記

ディレクター:堀 雅司(ライフワークス)

子どもアイデア楽工の山上敏樹コウチョウとは、開校して間もない頃、ニュースの取材でお邪魔してからのお付き合い。このガッコウへの取材を重ねるうち、独自の「教えない教育」という子育て論にとても共感。何より教育への情熱に溢れるコウチョウに会うたびに取材する側も心が元気になっていきました。それから7年余り。何度かニュースで取材に出かけたり、ボランティアで子どもたちの活動風景を撮影しに行ったり…。あの山のガッコウへ行くと、子どもたちの満面の笑みに出会うことができ、毎回取材が楽しみになっていました。
1年ほど前、コロナ禍で困っているとの連絡を受け、コウチョウに会いに行きました。数か月間の休校を余儀なくされ、参加する子どもの数は減り、キャンプや合宿など泊りがけの活動も中止。さらに各地で予定されていたコウチョウの講演活動や企業研修の依頼もすべてキャンセル。マイナスな要因だらけでした。
しかし、コウチョウは前向きでした。こういう時期だからこそ、やるべきことがあるはず。そこでかつてご両親が住んでいたマンションを改装し、オンラインスタジオを開設。オンライン授業やオンライン講演会を実現させました。さらにSNSを使って、多くの人とつながりを持ち、教育への熱い思いを訴えていきました。あっという間にコウチョウのファンが全国へと広がっていきました。
そんな中、出会ったのが、北海道室蘭市の少年、りゅうせい君(小4)でした。小学校でいじめられ、心を閉ざしていましたが、テレビ会議のシステムを活用して画面越しにコウチョウと度々話すようになると、りゅうせい君は、徐々に心を開いてくれるようになりました。
そのりゅうせい君が、休みを利用して、三重県まで体験入学に来てくれると聞いたときは、
とても興奮しました。りゅうせい君に会ってみると。本当に心優しき、真面目な少年で、とても豊かで繊細な感性を持っている子でした。その繊細さゆえに傷つきやすい面もありました。「繊細さん」と呼ばれる気質の子が全国に増えているとお母さんからも聞きました。
その勢いで室蘭市のご自宅までお邪魔しました。りゅうせい君、お父様、お母様、妹のみつきちゃんに快く出迎えていただきました。ご自宅で楽しくお話しし、市内の名所も案内してもらいました。短い時間でしたがりゅうせい君一家と楽しいひと時は、とても楽しく心が温かくなりました。忘れられません。ありがとうございました。
コウチョウとは、これからも長いお付き合いになりそうです。感謝!

番組情報

NPO法人 子どもアイデア楽工
【住所】〒511-0122 三重県桑名市多度町古野110番地(旧多度西小学校)
【電話】0594-87-7639
【FAX】0594-84-5336
【メール】info@kidea-gakko.or.jp
【ホームページ】NPO法人 子どもアイデア楽工

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