#319 醸すは奇跡の味 陸前高田発!発酵テーマパークの未来

2022年10月01日(土) 05:20~05:50 (テレビ朝日 放送) IBC岩手放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

日本人の食卓に欠かせない、しょうゆを造る老舗の小さな蔵元「八木澤商店」と、その八木澤商店などが中心となりオープンした発酵パークの「カモシー」…岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」を臨む場所にあります。震災後に一変したその場所に人の賑わいを取り戻そうとしているのが、八木澤商店の9代目・河野通洋社長。八木澤商店の直営店も入るカモシーは、パンやビール、チョコレートなど様々な発酵食品を味わえるお店の複合施設。いろんな味が楽しめるとあって評判を呼び、コロナ禍にあって多くの人が訪れています。

恰幅がよく、力強い言葉でふるさとの将来を語る社長。震災を乗り越えたもろみで醸造するしょうゆを「奇跡の醤(ひしお)」と名付け、自社の看板商品と位置付けており、白だしは、フランスの一流レストランでも使われています。

そんな白だしや奇跡の醤に続く新商品を開発している加藤千晶さん。地元の漁師や農家を訪ね新たな味のヒントを探っています。陸前高田には、日本一との評価も高い牡蠣など、まだ知られていない素敵な地域の宝がいっぱい…。加藤さんは
その宝を自社の調味料で味付けし、世に送り出すのが夢だといいます。

今回、フルーツ甘酒の新商品開発に密着。自社で製造できるようになった味噌の糀(こうじ)が醸す甘さと、地元で採れたブルーベリーやイチゴの甘さの両方を引き立てたい…何度も試作を重ね、ようやく社長のOKがもらえたのは、販売延期も視野に入れなければならなかったギリギリのタイミング。そんな新商品の初お披露目は、仙台市の百貨店で開催されるイベント。まだ誰にも知られていない新商品…はたして売れるのでしょうか…。小さな会社の大きな夢、そして女性たちの活躍を追いかけます。

編集後記

ディレクター:大野浩(IBC岩手放送)

ドキュメンタリー番組のテーマとして「地域の宝」という言葉が登場する事は多いと思います。今回の番組も地域の宝として、震災を乗り越えて復活したお醤油、そのお醤油も造る老舗蔵元の白だし、そして地元で養殖される牡蠣が映像・ナレーションで紹介されます。なので、本番組での地域の宝物は、食材・調味料なのですが、その価値を番組の中でどう伝えるべきなのか?非常に考えされられました。

私は普段、グルメ情報がコンテンツの柱となっている情報生番組のプロデューサーとして他のディレクターのVTRに触れ、時には自分でディレクターとして、カメラマンとしてグルメ特集のVTRも制作します。そこで紹介するのは15食限定の豪華海鮮丼や、名店の知られざる裏メニューといった料理の数々。なので、訴求ポイントはいたってシンプルです。赤字覚悟の限定大サービス!女性にうれしいヘルシーな味付け💛とった訴求ポイントに寄せるパワーワードやコメントをとにかく集め、現場音とナレーションで畳みかけます。とどめのシズル映像を撮影するため、湯気が目立つように暖房を止めてもらった寒い部屋で、裏あかりの角度を調節しながら、麺がきれいに持ち上がるまで何度だって箸上げをします。それはそれで決して簡単な事でなく、いつもいつも編集終わりで反省する日々ですが…。

今回は、全く違うテイストの番組。フランスのミシュランガイドで三ツ星を獲得したレストランも御用達!東京の市場で4年連続日本一の高値で取引!とっても魅力的なワードです。でも…地域の宝ってそういった周囲の評価が全てなの?と考えました。せっかく日本のチカラという素敵なステージなので、あくまで生産者が地域の宝を愛しむ思い、商品開発への熱意、宝物を生み出す人たちの思いでその価値を伝えればよいのでは…という当たり前の事を、編集の終盤も終盤になって思い知らされました。結局その試みは中途半端なものに終わり、後悔ばかりとなってしまいました。その四苦八苦する最中、何か番組構成のヒントは無いかと見直したそれほど多くない素材の中には、取材対象者の光る言葉がありました。通り一遍の撮影・インタビューの中にある、そういった言葉の価値を引き出し伝える事がドキュメンタリー番組だとしたら、ドキュメンタリー番組とは、なんと楽しく魅力的かつ、難しいものなんでしょう。

番組情報

陸前高田 発酵パーク カモシー
【住所】〒029-2204 岩手県陸前高田市気仙町町308−5
【全館定休日】火曜日(営業時間は店舗ごとに異なります)
【HP】https://camocy.jp/
【電話】080-2345-5162(発酵食堂やぎさわ/電話番号は店舗に異なります)

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