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北海道の内陸部、十勝の本別町は日本有数の「豆のまち」。肥沃な土地は夏場の昼と夜の寒暖差が大きく、小豆、大豆、いんげん豆など10種類以上の良質な豆が育ちます。ここに異色の経歴を持つ畑作農家が…荒井陽介さん、44歳。
5年前までは、外科医でした。難度が高い膵臓がんの手術もこなす腕利きドクターが、なぜファーマーに?「子どものころの夢をかなえて医師になった。人の命を救う医師の仕事にやりがいは感じていましたが、40が間近になってもう一度、別の目標にチャレンジしたいという思いが強くなって…」当時の荒井さんは、月に8回もの当直をこなし、土日も病院にいるのが当たり前。オペは多い時は週2回、最長20時間に及ぶ大手術も。
「一度きりの人生。ほかの世界も見てみたい」
荒井さんが第2の人生に選んだのは「農業」でした。2018年3月、鳥取県米子市から縁もゆかりもない北海道へ!妻の美代子さん、長女の花さん、長男の麻ちゃん、一家4人での移住です。2年間の研修を積み、2020年から畑作農家として独立。
「医者だったころはずっと建物の中での仕事。あまり日の光を浴びなかったけれど、今はご覧の通り、真っ黒に日焼けしています」日の出とともに起きて作物の生育状況を確認。農業機械の調整も自分で行います。「既製品のネジ回してフタを取るなんて『絶対にやっちゃダメだ』と言われて育った。今までネジなんて回したことがない」
季節感のないオペ室を出て、広大な畑で汗を流す“元外科医の畑作農家”の1年に密着しました。
編集後記
ディレクター:池田 佳史(HBCフレックス)
本別町では20年ぶりの畑作での新規就農。外科医から農家になった荒井陽介さんが取材中によく口にしていた言葉は「ラッキーだった」でした。
大規模農家が多く、新規就農が難しい十勝。離農者が出ても近隣の農家が畑を引き取ってまいます。荒井さんは「自分が農家をやりたいというタイミングで、畑が空いているかどかは、幸運が重ならないと難しいのかな」と話していました。また、荒井一家を快く受けれてくれた本別町の人たちとの出会いにも、荒井さんは感謝していました。
小まめにメモを取ったり、独自の作業工程表で畑を管理したり…荒井さんの農業へ対するまっすぐな思いや人柄が、幸運を呼んだのかもしれません。
そんな荒井さんに今年の目標を聞いてみました。「独立して3年やってきて、まあまあ慣れてきた気になっているので、けがなどとんでもない凡ミスをしないことですね。」。慢心など微塵も感じさせない…なんとも荒井さんらしい言葉。子どものころの医師という夢をかなえ、40を前に第2の人生、“一人前の農家になる”という目標に向かってもくもくと突き進む。心から応援したいと思う愛すべき存在でした。
番組情報
JA本別町 営農振興部
調査役 岡崎 高万(おかざき たかかず)さん
【住所】北海道中川郡本別町北5丁目2-1
【電話】0156-22-3137